新しい国になるための準備
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元ササナスラ王国の国王の公開処刑が行われた。
その数日前から広場に杭を打って鎖で繋がれた元ササナスラ国王の姿が晒し者にされ、国民にその姿を見せながら元ササナスラ国王の罪を、日に四回騎士が高らかに訴えた。
老いてなおギラギラとした目で自分を助ける者は居ないのか?!と声を張り上げる元国王は、上半身は痩せ衰えた老人、下半身は黒くヌメヌメと蠢く触手の醜悪な化け物の姿。
その姿を見た子供達が泣きわめき、婦人の中には気絶する者まで現れて、屈強な男でも顔をしかめる有り様で、誰一人元国王に声をかける者さえ現れなかった。
それは非難の声や怒りの声さえも。
騎士の話によれば、無言のままただ元国王の成れの果てを見つめる国民の姿も、とても不気味だったとのこと。
そして公開処刑。
首を落としても触手が生えてきそうだったし、普通の武器や処刑道具では死なない可能性も考えられ、教会の聖魔法が使える神官が弓矢に聖魔法を纏わせ、その弓をもって、三百六十度騎士達が周りを囲って、一斉に撃つ。
俺の聖魔法なら一発で仕留められただろうけど、これはこの国をこれから担っていく人達の手で行うものなので、俺は手を出さなかった。
その分元国王は長く苦しめられただろうけど。
何度も何度も弓撃たれ、身体中に針山のように矢を生やした元国王は、さらに火を放たれ、呻き声と怨嗟の声を残して灰になって亡くなった。
亡くなる直前に、イイイイイイイイーーーーーー、っと断末魔をあげるリッチが元国王から分離するように現れ、周りをざわつかせたけど、それも呆気なく消えたし。
こそっと姿を消して近付いた精霊達によって、最後は灰も残さず浄化されてたし。
ところで、ねえ?何でお前がそこに居るの?精霊達が灰を浄化中に、何かがウゴウゴしてんな~?と思ったら、ピギューーーー!!と鳴き声がして、灰の中から見覚えのあるものが転がり出てきた。
全身に灰が被さり、弓が刺さった跡が体中にあり、痛みになのか、のたうち回ってる臭い臭いそれ。
元女神の成れの果て。
ササナスラの元国王って、あんなものまで呑み込んでたの?見境無しかよ?!
もしかして自分の魔力に引かれたの?
元女神改め生肉色の団子虫は、物凄く頑丈なので、槍で突いても剣で切っても死なない、ただ傷は付くのでとても暴れる。
面倒なので、海にでも捨ててきてもらうことに。
体中に傷があるのに海水に入れられたら滲みるよね!
それからはリュグナトフ国の支援を受けて、魔物に蹂躙された街の復興が始まった。
いくら一旦は空っぽになったとは言え、また時間が経てばダンジョンの魔物も復活するだろうし、出来ればその前に人が住める場所の確保を!とのこと。
ダンジョンを放置してまた魔物が溢れ出したら大変な事になるからね。
ただ元国王の命令とは言え、ダンジョンの管理を放り投げて逃げてた街の領主は解任したけど。
やはり命令で避難してた街の人達は、お金を払えば街に住むことも出来る。
暫くの間は、リュグナトフ国から移住希望者を募って、その人達優先に街を作っていく予定。
意外と冒険者で引退後の職を求めてダンジョンの街に移住を希望する人は多い。
今回はリュグナトフ国からの移住なら優先されるし、多少の補助も貰えるので、希望者は結構集まってるそうな。
復興作業に国の現状を調べること、各大臣達の見極めに、元王族達の処分、国王へ打診されたアールスハインは精力的に働いて、助も護衛として、ユーグラムは教会関係の仕事へ、ディーグリーは支援物資の運搬や足りない物資の交渉とかでとても忙しい。
アールスハインの作る新しい国に期待しているのか、リュグナトフ国から続々と移住希望が出てる。
赤ちゃん抱っこしたシェルまで現れた時はびっくりしたけど。
シェルが来たから旦那の副将軍まで移住希望してきて、将軍さんが慌ててた。
文官も結構来た。顔見知りもいたり、学園の同級生がいたりで懐かしくなったり。
アールスハインの回りは、暫くはリュグナトフ国からの人員で固める予定。
そんな慌ただしい中、俺の出番は無い。
ので、王城を散歩したり宝物庫の魔道具の呪いを解いてみたり、ダンジョンに籠って散歩したり魔道具の入った宝箱を探したり、ポツポツと湧いてきた魔物を倒したりして暇を潰してる。
聖獣チートで国を支配しちゃったら、元ササナスラ国王と変わんないからね。
ただ、国民全員につけられてた魔道具の浄化はしたよ。
あれはあってはいけない物だからね。
奴隷の首輪的な、装着した人か契約者しか外せない類いの物じゃなくて良かった!
集められた魔道具をサクッと浄化するだけのお仕事。
これは何か別の使い道がないか探す為に魔法庁の人達が回収してった。
まだまだ国民全員分の回収は済んでないけど、各貴族達が回収を約束してくれたので、直に解決出来るだろう。
そんで報酬を貰ったけど使い道がねー。
アールスハインに寄付しようとしたら断られちゃったし。
アールスハインが色々な人に相談したり助言されたり励まされたりしながら、新国王になることを了承したのは半年後。
リュグナトフ国の属国としてではあるけど自治は認められ、新たな国として再出発をすることになった。
決め手はイングリードとクレモアナ姫様との会話だったそうで、
「良いじゃない!やりなさいよ!」
「おう!ハインなら適任じゃないか?」
「いえ、ですが、俺は国政に関わった事もなく、好き勝手していた身ですから、そんな俺が国王になっても良いものかと」
「大丈夫よ!わたくしがなれるのだから、王子教育は受けているのだし、自信ありげに堂々としてれば何とでもなるわよ!ハインを慕って手を貸してくれる人は多く集まっているのでしょう?」
「ありがたいことに、周りには多くの親しい友人も集まってくれていますが、それならばイングリード兄上の方が適任ではないですか?」
「いや、俺にはあの国は無理だな」
「どうしてですか?兄上のような強い方が王位に立たれた方が国としても安泰ではないですか?」
「それじゃ~あの老いぼれと変わらん国になるだろう?」
「そうね~。例えばイングリードがリュグナトフの国王になったとして、無茶な命令を連発したとしても、それを力ずくで止める人がこの国には多く居るわ。それだけの信頼と実績が有るからこそ出来ることよね。でも新しくなったあの国にはそんな人は居ない。間違いを正してくれる人が居ない国は、王になった者の思惑でどうにでも転がっていってしまう。それは恐ろしい事よ。わたくしには夫やお父様やお母様達が居るわ。イングリードにもイライザが居るけれど、イライザ一人でイングリードを止められるかは、ちょっと心配になるわよね?イングリードにはこの国で培ってきた人脈が有るからこそ、この国の王にはなれるかもしれないけれど、新しい国を作るとなると、それにはまた別の能力が必要になってくるわね?」
「その能力が自分にあるとは思えません」
「あらイングリードにはもっと無いわよ?」
「ひでぇ言われようだが無いだろうな?」
「国を纏めていくには、根気と大局を見る目、国を活かす知識、問題に対処する能力や色々な事が必要になるわよね?イングリードは、問題に対処する能力はあると思うわ。短絡的な対処になる可能性が大きいけど!ただそれ以外の能力は殆ど無いと言っていいわね。他国へはあまり行ったことがないし、知識もいまいちだし、根気は無いし」
「何だよ、俺は能無しか?」
「王族としての教養は最低限あるけど、あなたは将軍に向いてるのよ!この国にはなくてはならない存在なんだから良いじゃない!」
「まあ、それなら良いけどよ」
「ハインはわたくし以上に多くの国を見て回り、しかもそれは王族として挨拶した程度ではなく、冒険者として平民からの目線で見た見識がある。王族として教育された者に、その見識は中々身に付かないものよ。ハインは子供の頃に呪われていたにもかかわらず、腐りもせずに他の能力を磨く努力を欠かさなかった事から根気も充分にあるし、大局を見る目や国を活かす方法なんかはこれから国の人達と考えたり試行錯誤していく問題だしね」
「…………………自信がありません」
「ハイン、そんなもんはこれからつけていけば良いんだ!一人で背負う訳じゃない!困難で辛くて、どうしようもなくなったら、幾らでも俺達が助けてやる!ぶっちゃけ王様ってのは国の一番って顔してふんぞり返って笑ってれば、国は何とかなるもんだ!」
「いやいやいや、それは流石にどうかと思うけど!まあ、あまり深刻に考えないで、気長にやってみなさいよ!死人さえ出さなければ、やり直しは出来るんだから!それにハインには間違いを正してくれる頼もしい仲間が居るでしょう?大丈夫よ、変な方向に突っ走っても、殴ってでも止めてくれる人が居るんだから、やりたいようにやりなさい!」
兄弟達のあっけらかんとした態度に、アールスハインも肩の力が抜けて、ちょっと前向きに考えを改められたそうな。
皆様の予想通り、ちったいさんのお話ももうすぐ終わります。
ここまでお付き合い下さりありがとうございます!
皆様に納得頂けるかは分かりませんが、頑張って書いておりますので、最後までお付き合い頂けると大変嬉しいです!
よろしくお願いいたします!




