ササナスラ王国はなくなりました
誤字報告、感想をありがとうございます!
一ヶ月の準備期間があり、万全とは言えないまでもササナスラ王国の現状を知って、人々が何とか動けるようになった事を確認して、今回の騒動に関わりがなく無事だった各貴族家へ一ヶ月後に王城への登城命令書を出した。
その間ずっとササナスラの王城で暮らしてたんだけど、国王の部屋を使おうとした王様が、書類と世界地図と魔物の素材と古代魔道具に占領されて寝る場所もないそうで、別の部屋を選んでた。
各王族の部屋をリュグナトフ国の偉い順番で使ってたんだけど、ササナスラ王族、趣味が悪いね!
無駄にキラキラだったり、オドロオドロしかったりメルヘンだったり、かとおもったらベッドと机しかない部屋があったり。
将軍さんがお妃様のキンキラキン部屋を選んでたのは笑ったけど!
アールスハイン達と俺とペット達は、謁見の間にテント泊してました!
だって断然快適だし!
そして宝物庫が凄かった!
古代魔道具の宝庫で、黒い靄も多いけど、凄い性能の魔道具も多かった!
テイルスミヤ長官と魔法使い達が大興奮だったけど、地下空間の模様の解析が先なので、悔しそうな顔で地下への階段を下りてった。
二ヶ月の間に分かった事は、ササナスラ王国の国民は、生まれると同時に教会へ行って、無料で祝福と言う名の魔道具を着けられるそうで、呪いや災難を退けると宣伝されてる魔道具は肌身離さず身に着け続けるのが習わしなんだとか。
その魔道具はネックレスだったりブレスレットだったり足に着ける輪っかだったりで、成長と共に伸縮して体にフィットするそうで、態々外す人はいないそうだ。
身分によって装飾も変わり、平民は丈夫な皮や紐、貴族ならば宝石などが付いてる物まで様々。
国民には知らされてなかったけど、その魔道具で魔力を集めてたそうで、各街町の教会には大きな魔石が置かれ、そこからさらに王都へ、王城へと魔力が送られる仕組みだそう。
大掛かりで手間隙かかる仕組みは、ササナスラ国王が何十年もかけて作り上げたもののようで、教会も国民の為にと騙されてた様子。
小さな町はまだだけど、大きな街の魔石は回収された。
物凄く大勢の魔力がまざりあって気持ち悪い魔石になってた。
騙されてた協力させられてた教会関係者は、お咎めはないけど、そんな非人道的な事に荷担していた事に深く深く反省をして、ほとんどの神官が見習いからやり直します!って宣言して巡礼の旅に出る事になった。
ただ今すぐではなく、リュグナトフ国から多くの神官が派遣されてくる約束も取り付けたので、それが落ち着いてからとのこと。
騙されてただけだと知って、ユーグラムがホッとしてた。
脳筋は騙されやすくて困るね?不正の欠片もないのは良いことだけどね。
国中の貴族が集まる謁見の間はザワザワと五月蝿い。
王都から離れた領地では、今回の騒動を全く知らなかった貴族も多く、集まった他の貴族から話を聞いて、様々な憶測が飛び交っている。
そんな中、玉座に座るのはリュグナトフ国国王様。
一段低い所には正装姿のアールスハインと将軍さんが立ち、玉座の前には捕らえられたササナスラの王族が膝を付かされている。
アールスハインがチリーーンと高く澄んだ音の鐘を鳴らすと、騒いでいた貴族達が沈黙する。
「此度の戦はササナスラのリュグナトフ国への侵略である!我々リュグナトフ国軍はそれを退け、首謀者であるササナスラの国王を捕縛した。ササナスラ国王は最早人では有り得ぬものに成り果てた!したがってこのササナスラ王国は今日をもって我がリュグナトフ国の属国といたす!反意あるものは名乗り出るが良い!」
将軍さんのビリビリと腹に響く大声に、ササナスラの貴族達は一言も発しない。
そしてガラガラと重い音の後に玉座の前に運ばれて来たのは檻。
中には痩せ衰えて半身が触手の元ササナスラ国王が入ってる。
捕らえられ膝をついていた王族達が悲鳴をあげる。
貴族達も驚愕の目で息を呑んでいる。
「これがササナスラ国王の成れの果てだ!お前達はこの醜悪な化け物に支配され、魔力を奪われ操られていた。今更この化け物に従う者はおらぬだろうが、しかと見よ!そして我々リュグナトフの軍門に降れ!ササナスラの王族は操られていたとは言え、その罪を免れるものではない。よって終生労役を科す!貴族諸兄は我々リュグナトフ国に従うのであれば、その身分は保証するものとする」
一際大きく将軍さんの声が響くと、ザワザワと近くの貴族と話し合う声が聞こえる。
それを眺めながら暫く待った後に、
「答えよ!ササナスラ王国貴族よ!陛下の御前である!」
将軍さんが吠えるように聞くと、ザッと音を立ててササナスラ王国の貴族達が一斉に平伏した。
それは貴族の礼ではなく、平民が王様に謁見する時の姿勢。所謂土下座。
中には戸惑って姿勢を崩してる人もいるけど、誰一人立ってる者はいない。
「よかろう。今この時をもって、ササナスラ王国は消滅する。今後の事は我々リュグナトフ国で決めるものとする」
王様の声にも頭を上げる者はなく、予想外にすんなりとササナスラ王国の主権を奪う事が出来てしまった。
厳めしく睨みを利かせている将軍さんは、内心では肩透かしを食らったと思ってるだろう事は、リュグナトフの人間にしか分からないだろうけど。
謁見の間を出ていく貴族達を見ながら気になった事を確かめる。
「んう?」
「どうしたケータ?」
助に聞かれるが、今はちょっと思い出してるので待って!
ササナスラの元国王の檻に近寄ってよーーーーーく見る。何となく匂いも嗅いでみる。そして気付く。
「ああ!」
「だから何だよ?」
「たびゅん~、このしとが食ったリッチーを、もとめがみが、まおうにしようとしてた感じ~?」
「元女神って、芋虫の?」
「そう」
「あー、聖女に与える試練とかで魔王作ってたんだっけ?それがこの爺さんに食われた、と?あれ?でも前に魔王にされそうだったヘビ族の男の子助けなかった?」
「あの子は、めぎゃみーしっかくなってから作ろうとしたまおー。んでこっちは、めぎゃみーの時につくろーとしてたまおー。うとまりのまーりょく抜けたら、元めがみのまーりょく感じりゅ」
「へ~。まあ色々今更だけど」
「うん。気にちなくていいとおも~」
「だな」
前にギャル男神が言ってた俺達なら簡単に倒せるって言ってたけど、ややこしい事になってちょっと苦戦したけど、まあ倒せたし良いだろう。
解散して領地に帰る貴族達の様子を暗部の人に追跡させる。
突然のようにリュグナトフ国の属国になった事への反応を見るため。
元ササナスラの生き残った王族の人達は年端もいかない子供達は平民の孤児院に入れられ、その他はバラバラにされ魔力を制限する腕輪をつけられて終生働く事になる場所へと運ばれていった。
そして会議。
元ササナスラ王国の宰相を務めていた者、大臣だった者達を集めて、これまでのササナスラの政治体制を聞いたり、貴族の関係などを聞いたり。
何十年もかけて老人の一強体制を作ってきたので、宰相も大臣達も、言われたことをやるだけの人形になってただけで、自分の意見を通そうとする我が皆無だった。
将軍さんが物凄く納得いかない顔をしてた。
ササナスラの人達を帰した後のリュグナトフ国の人間だけの会議では、
「ありゃ~駄目だ!国を担う気概もなけりゃ~愛国心も欠片もねぇ!あれでよく国が回ってたな?」
「その気概やら気力も意思も悉く彼の老人に奪われていたのだろう。ある意味支配はしやすいが、国として治めるのは困難かもしれんな?」
「そんで?誰に任せるんだ?この困難な国をよ?」
「アールスハイン、やってみないか?」
王様の軽い口調に、
「は?」
アールスハインの呆然とした声が返る。
「クレモアナはリュグナトフの次期国王だ」
「それならばイングリード兄上が順当では?」
「イングリードは、リュグナトフ国の王にはなれても、この国の王にはなれん」
「あ~、あいつには堪え性も思慮深さもね~からな~。こんなただただ従うことに慣れて、自分の意見も言えね~奴等相手だと、一回ぶっ壊して立て直そうとするかもな?そんで出来上がる国はちっと見てみてぇがな?」
「だろうな。だがそれでは死人が出過ぎる。国としては成り立たんだろう?なに、今すぐと言うわけではない。暫くは我々も様子を見るし手を貸そう。復興が済むまでは暫くはかかるだろうしな。その間によく考えて答えを出せ」
「………………はい」
「なに、お前さんなら出来るさ!多くの国を見て、多くの人を見てきただろう?この国は長年支配されることに慣れすぎて、支配者が代わっても驚く程反抗心が湧かない国だ。その分じっくりと腰を据えて、自分の望む国造りをすれば良い」
将軍さんの言葉にアールスハインの眉間に深い皺が!
「自分の望む国造り」
「ハインはどんな国を望む?」
王様がちょっと楽しそうに聞くのに、アールスハインは難しい顔をして、
「国民が飢えることの無い国であってほしいです」
「それから?」
「身分や家に縛られる事無く、望む職業を選べると良いと思います」
「ふむ、それで?」
「子供達が笑ってる国が良い」
「まだまだ漠然としたものだが、確かに理想ではあるな?ハインの言ったような国にするために、自分に何が出来るのかを考えなさい」
「はい」
「クレモアナやイングリードに話を聞くのも良いかもしれんな」
王様の言葉にアールスハインも頷いてる。




