第20話 白姫、空を舞う
土魔法で槍を完全に埋め立てて、更に深さ10mほどの大きな容器を作り、結界魔法で強化する。そして水魔法を使って大量の水をいれる。
マジックポーションを大量に消費したが、時間の節約のほうが大切だ。
パラシュートは用意できなかったが、外套を用意してもらった。変質者のようにガバっと開きながら落ちれば多少は空気抵抗が増える筈だ。魔力を使って身体を硬化する方法もレクチャー済みだ。
まずは小太郎が飛び降りる。風魔法を使用して上昇気流を発生させながら「ちゃぽん」と言った感じで着水した。上手なものだ。彼ならばプールなしでも問題なかったかな。
続いてメグ姉の番だが、彼女は風魔法にあまり自信がないので上昇気流は下にいる俺たちに任せるつもりのようだ。
「飛び降りた!」
俺は双眼鏡を使って、遥か天井付近を見守っていた。
小太郎に比べると動きが硬い。モモンガのように外套を開いているのだが、身体が下方向を向いてしまっているためあまり風を受けていない。
「アップドラフト!」
皆で一斉に上昇気流を発生させたので、落下スピードは軽減しているが落下位置がズレている。この調子だとプールに着水できるかどうか微妙なところだ。
「トルニャード!」
気合を入れてアヤさんが【トルネード】を放つと、落下していたメグの身体がらせん状に回転しながら上方に押し上げられた。だが、あまりにも強烈な衝撃にメグは気を失ってしまう。
「この調子だと毒沼に落ちるぞ!」
小太郎が叫ぶ。
仕方ない。俺が毒沼に入って言って直接受け止めるか。一旦上に押し上げられたこともあって落下スピード自体はそれほど早くない。
「白姫!」
その時、晶くんが叫んだ。上空には神々しい光を放つ白いフクロウが飛んでいる。
「進化したのか……美しいな」
レベル制限が解除されレベル32となった白姫は更に一回り大きくなっていた。
白姫は素早くメグ姉の下まで飛んでいく。そして彼女の落下速度と同期するように斜め下方向に角度をつけて飛んでメグ姉を自分の背に乗せ、そのままゆっくりと着地した。
「「「おおっ!」」」
皆で歓声を上げる。
「さすが白姫だ。鼻が高いよ!」
晶くんがそう言って白姫に抱きつく。
「ホーッ!」
白姫はそう叫ぶと人型の姿に変化する。てっきり聖獣あたりに進化した思っていたが、先程は【獣化】スキルを使用して一時的に獣の姿になっていたのだ。
梟人となった白姫は可憐だった。目はぱっちりとしていて、白くて大きな翼が神々しい。出るべきところはしっかり出ていているが、全身がフサフサの毛に覆われているので素肌は見えない。
晶と抱き合う姿が微笑ましかった。男の娘と雌の獣人——はたしてこれは「ユリ」なのだろうか?
「私は梟人白姫ホ。今後ともよろしくホ!」
白姫はそう言うと、人間には絶対に不可能な首の動きをした。いやー可愛いけどちょっと怖いかも。
今後メグ姉は白姫たちとパーティを組んでもらうので、たぶん打ち解けるきっかけになるだろう。
「今後は俺たちのパーティをネコ組、晶たちのパーティをフクロウ組と呼ぼう」
幼稚園の学級名みたいな感がすこしあるが、かわいいから良しとしよう。
実力から言ったら小太郎がパーティリーダーをするべきだろうが、ここで問題が発生した。
「晶がリーダーじゃないと嫌だホー」
白姫が主張する。
「別に俺は構いませんよ。このダンジョンじゃ彼らのほうが先輩ですからね」
小太郎は意外と聞き分けがよかった。
「私も問題ありません」
いつの間にか意識を取り戻していたメグ姉がキリッとした凛々しい表情で同意する。今更感が漂っているができる女を演出したいらしい。身体能力はいまいちだが、知力は高めなので魔法については今後期待ができる……かも知れない。
<闇騎士の反応があります>
子パーティを結成してもらうとすぐにソフィアが報告した。このまま毒沼を北岸まで歩いていった辺りにいるようだ。
「フクロウ組のデビュー戦にちょうどいい相手じゃないか」
地下11階の闇騎士はアヤさんがあっさりと倒してしまったが、地下22階ならばもう少し強い。
俺は『身代わりのペンダント』と『生命湧きの腕輪』をメグ姉に貸し与えた。闇騎士は一番弱い敵やヒーラーを真っ先に狙うので、その対策だ。
『生命湧きの腕輪』はHPを自動で回復してくれるエピック装備だが、HP残量が少なければ少ないほど素早く回復する。だから『身代わりのペンダント』で復活した直後のHP1の状態が続くことはなく、あっという間に最大HPの20%ぐらいまで回復するのだ。
敵は予想通り一番レベルが低いメグ姉を狙ってきた。慌てずに時間を掛けて敵の攻撃を捌いて、敵の大技を躱した後に小太郎が起点となって攻撃を仕掛けている。パーティー・リーダーは晶だが、実際の指揮は小太郎が取っている。
フクロウ組はまず闇従者を倒し、続いて馬を倒した。そして最後に下馬した闇騎士を倒す。馬はテイムできなかったが、この強さならば今後もチャンスがあるだろう。




