第19話 腐を兼ねる女
白姫ちゃんの進化は地下22階の宿を借りて行うことになった。街の中ならば守護天使がいるのでどこでも良いのだが、進化後にすぐに合流できそうな階層にした。
問題はその間の晶くんの処遇だ。レベル30になったとはいえ、地下22階にてソロで狩りをするのは厳しい。かと言って、地下11階に上がって小太郎たちとパーティを組んで地下7階まで上がるとなると敵が弱すぎる。
「詩織には一時的に晶くんとパーティを組んでもらって、地下22階で狩りをしてもらいたい」
そう言うと詩織はちょっと不満そうな顔をしたが「オークを中心に狩ったら?」と言ったら納得してくれた。
地下22階の宿に泊まって、朝食後に全員で像の周りのカニとザリガニを倒して毒沼の浮き橋を上げておく。浮き橋のギミックは一日に一回リセットされるようだ。
詩織と晶くんは地下22階で狩りをして、俺たちは地下33階に戻って狩りをする。夕方になると地下22階に戻って一緒に晩飯を食って同じ宿に泊まるというルーチンを続けた。
2日目の夜に俺の部屋がノックされた。金銭的にも余裕があるし、街なかにいる時は各自個室に泊まっている。
扉を開くとそこには晶くんが立っていた。顔を真赤にしてもじもじしている。
「あ、あのすみません。詩織さんに無理やりオークの睾丸を食べさせられてしまって……いま彼女から逃げているんですが匿ってもらえませんか?」
「お、おう」
オークの睾丸を食した後に女から逃げてここに来るということはやはりそういうことなのだろう。ついに俺も覚悟を決めて新しい世界への扉を開くときが来たのかもしれない。
「とりあえず中に入って」
俺がそう言うと同時に詩織の声が響く。
「みーつけた。そんなに私の相手が嫌ならばせめて見学させなさい」
「見学って、詩織、お前もしかして——」
俺のその問を遮るかのように詩織は「腐腐腐」と笑いながら、何かを取り出した。
「これ、オークの肉と睾丸をもとに作ったローションです。唾だと痛いですよ?」
「い、いつの間にそんなモノを……」
「道具屋のおじさんに協力してもらいました」
もしかして道具屋のおじさんまで食べちゃったのか? 二足歩行でアレが付いてたら全部OKってぐらいの勢いだな。さすが「至高の悦楽」を目指しているだけのことはある。
***
「ふぅ……」
ちょっとしたハプニングはあったが、無事に3日間が過ぎようとしていた。白姫ちゃんの進化も佳境に入っているはずだ。
晶のレベルは32まで上がったが、詩織のレベルは変わらなかった。今の彼女のレベルを考えると敵が弱すぎるのだろう。本職はヒーラーなのだが、今のステータスならば物理でオーク達をゴリ押しすることもできる。それでもオークジェネラルの睾丸が5つ入ったのでご満悦だ。
一方でアヤさんのレベルは1つ上がって45になった。常時「ニャヒーン」を召喚しているので、経験値の入りが良くなったのと、ミルチェルからプレゼントしてもらった「獲得マカ増量」効果のあるレリック装備が効いているのだろう。
アヤさんは上下関係に敏感でレベルが追いつかれてからは詩織の首筋に噛みつこうとする素振りをたまに見せていた。今後は「アヤさん>詩織」となるようにしておいたほうがパーティ内の秩序が保てるだろう。詩織に追いつかれそうになったら、密かにアヤさんにマカを渡すという手もあるかもしれない。
【鋳造】スキルがついに+6になったのでマカ獲得効率が5%上がった。たかが5%されど5%。四六時中マカの【鋳造】と【溶解】を繰り返してきた甲斐があった。
また、【召喚】スキルが+6になったのでモンタロスの配下16名を【眷属召喚】で呼び出すことができる。ジェネラルは最大2名で、ロイヤルガードも最大4名なので、雑魚比率が上がってしまうがそれでも強力だ。
3日目はちょっと早めに狩りを切り上げて、毒池の中にある例の孤島にみんなで集まった。これからメグと小太郎に飛び降りてもらうのでそのための準備だ。




