第18話 いきなりNTR
階層ボスが戦わずして降伏してしまったため、戦闘を通して新メンバーとの交流を図るのは厳しそうだ。地下11階の闇騎士とは戦えるとは思うが、まだ夕暮れ時だからもうしばらくは出てこないだろう。
街のそばに焚き火の跡があった。風間たちのグループが不定期に使っていたようで、薪はまだあるという。
「闇騎士が出るまで新メンバー歓迎会を兼ねてキャンプファイヤーをしよう」
街で酒とつまみを買ってきてから、薪を魔法で燃やす。
この場所は街の外なので安全地帯ではない。が、街からはほんの50mほどしか離れていないので、何かあった場合にはすぐに逃げ込める。どのみちこの階層の闇騎士は地下22階よりも弱いだろうから、心配はあるまい。
「まさか闇の使徒であるお主と轡を並べることになるとはな」
モンタロスが感慨深げに呟く。
「属性的には真逆とは言え、同じダンジョンに階層ボスとして配置されたのだからそれほど不思議なことはあるまい」
闇属性に秀でたブラックモアが答える。
うんうん。被召喚者同士の関係はとりあえず問題ないようだ。
「小太郎とメグにはこのあと地下22階まで降りてもらって、晶くんたちと合流してもらおうと思う。地下7階にある廊下の罠は知ってるな?」
「ああ、配下が1人落ちた」
小太郎がぶっきらぼうに答える。
「落ちた先が地下22階だ。罠が設置されていて普通に落ちると串刺しになってしまう」
「……その言い方から察するに、回避方法があるんだな?」
「俺たちは土魔法と風魔法を使ってかろうじて生き延びた。瀕死になったがな。晶くんは白姫ちゃんに助けられたそうだ」
「なるほど。俺はたぶん大丈夫だろうが、母ちゃ——メグは平気だろうか?」
「罠を無効化する仕掛けを考えている。念のために外套を用意しておいてくれ、風の抵抗が大きい方が安全だからな」
小太郎たちの降下作戦は2日後に行うことにした。その上で、晶くんたちとパーティを組んでもらって相性的に問題ないか確認してもらう。四六時中顔を突き合わせている集団で人間関係が上手く行かないと地獄だからね。
その後はみんな酔いが回り、かなり無礼講と言った感じの雰囲気になってきた。すっかりひとり酒に慣れていたが、やはり酒は仲間と飲んだほうが楽しい。
「闇騎士がやってきたようなのだー」
いつの間にか参加していたミルチェルが告げる。
「詩織、みんなの酩酊状態を回復してくれ。ん、詩織はどこだ?」
俺は自分で【キュア】を掛けて酩酊状態を回復すると、あたりを見やった。遠くの物陰に人の姿が見える。双眼鏡を取り出して覗いてみるとどうやら詩織と小太郎が輪を抜け出してしけこんでるようだ。俺は忍び足で近づいた。
小太郎は忍者系のキャラだからあまり近づきすぎると気づかれてしまうだろう。少し近づいて俺は聴覚に全神経を集中した。
<スキル【地獄耳】を獲得しました>
「あんた伊東さんの女なんだろ? ちょっと不味いんじゃないか?」
小太郎はすこし動揺している。
「大丈夫よ。お屋形さまは度量が大きいから、私が奔放に振る舞うのを黙認してくれてるの」
詩織はそう言いながら慣れた手付きで小太郎の服を脱がしている。
「……ってことはあの晶くんって男の娘とも?」
「ううん。彼はあまり女に興味がないみたい」
「じゃぁ、誰を相手に?」
「細かいことはどうでも良いじゃない」
代わりに俺が答えよう。相手はモンタロスおよびその手下だ。
「毎晩6回はもう勘弁してくれ」
と俺が言ったら、ミノタウロス達にも手を出すようになった。モンタロスに直接相談されて発覚したのだが、ここまで来るともはや怒る気にもならない。
「至高の悦楽を求めて自分は生きている」
詩織はベッドの上でそんな事をいったことがある。彼女は1本では満足できない女なのだ。たぶん10本でも満足できないだろう。千本、そして一万本——前人未到の領域に彼女は進んでいる。性病がちょっと心配だが……。
「ああ、それ! 激しいの好きッ!」
小太郎は若者らしくややせっかちな攻めだが、詩織としては問題ないらしい。【地獄耳】スキルを使わなくても聞こえるぐらい音量で詩織が喘ぐ。ほぅ。ああいうのが良いのか……よし、今度俺も……。
彼女がエロい人だということはよくわかっているが、最近は偉い人でもあるのではないかという気もしている。あれたけ美人で巨乳なのに男ならば基本的に誰とでもしてくれる。それってもはや観音様の境地に近いのではないだろうか?
いまでは詩織の生き様を認めるべきだと思っている。若い頃だったら激しく嫉妬していたに違いない。これもある種の年の功なのか——あるいは単にNTRに目覚めただけかもしれんが。
正直言ってメグ姉と関係を持ってしまったので、小太郎にたいして若干引け目があったのだが、これで相子だという妙な安堵感もある。
「闇騎士討ち取ったにゃー」
アヤさんの勝どきが耳に届き、俺は我に返った。
「さすが、アヤさんなのだー。ご褒美にこれをあげるのだ!」
ミルチェルはそう言ってエリクサーを差し出して、アヤさんに小声で何かを伝えている。
「んニャ?」
アヤさんは瀕死の馬に近づいて言ってエリクサーを無造作に掛けた。
「出ろ、ニャヒーン!」
「ヒヒーン!」
どうやらあの馬はアヤさんの召喚獣になったようだ。ぶっちゃけアヤさんの方が馬よりも速いので、あまり意味がない気がする。が、覗きに夢中になって、まったく戦闘に参加していなかったのだから何も言うまい。
「『ヒヒーン』じゃにゃくて『ニャヒーン』にゃのだ。やり直すにゃ」
「ヒヒーン」
アヤさん……「ニャヒーン」って鳴くのは流石に無理だと思うよ?




