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ウ〇コは概念である



「ガアアッ!」


「ぐああッ!」


 振りぬかれた拳が無防備のシーモネイターを捉え、鋼の身体を砕いて風に舞う紙切れのように吹き飛ばす。

 賢者モードが終了していたために反応も受け流すこともできなかったシーモネイターは、成す術もなく吹き飛ばされ、地面を削って壁に叩きつけられるしかなかった。


「シーモネイター!」


 その光景に、ホワイトルミナスは顔を青褪めさせて悲痛な悲鳴を上げる。


 あまりの威力に千切れたシーモネイターの腕が金属音と共に地面に落下し、勝利に沸いていたすべての人々を絶望のどん底に叩き落としていた。


「こんなもんで、俺がやられるかよ……この程度で俺を殺せると思うな!」


 両の足で地面を踏みしめ、音が鳴るほどに強く牙を噛みしめるゾルグは、怒りを露わにして吠えるように言い放つ。

「ば、馬鹿な。確かに、生命活動は停止していたはず……」

 その咆哮に、腕に力を入れて大きく亀裂の入った身体を起こしながら、シーモネイターが驚愕を禁じえない様子で言う。


 シーモネイターもゾルグの強さは理解している。

 だからこそ、決定的な一撃で倒れただけでは安心できず、その生命反応にまで意識を向けて勝利を確信したのだ。

 にも拘わらず、ゾルグはその身に袈裟懸けに刻まれた傷から血を流しながらも、生命力に満ち溢れた姿で立ち上がってきたのだから、その驚愕は当然のことだった。


(まさか、自力で自分を蘇生させたとでもいうのか……)

 その脳裏に信じがたい可能性がよぎった瞬間、地を蹴って肉薄したゾルグの拳が容赦なくシーモネイターに打ち込まれる。


「ガアアアッ」


「グハッ!」


 暗黒の力を帯びた拳を打ち込まれたシーモネイターは、苦悶の声を出す間もなく吹き飛ばされ、地面に激突して、地震を思わせる衝撃を引き起こす。

「シーモネイター!」

 何かが砕ける音を立てて吹き飛ばされたシーモネイターに、ホワイトルミナスとガーネットは悲痛な声を上げる。

 その身を以てゾルグの攻撃を受け、たった一撃で戦闘不能に追い込まれた二人には、その光景がシーモネイターの死を連想させるに十分だった。

「ぐ、う……っ」

 天を衝くほどに高く吹き上がった爆塵の中でうずくまるシーモネイターは、その鋼の身体に大きな亀裂を刻み込まれていた。

 生きてこそいるが、今にも壊れてしまいそうなその姿に、ゾルグは爛々とした双眸を向ける。

「お前はよく戦った。――だが、もう終わりだ」

 シーモネイターの力を認め、敵として敬意を表したゾルグは、その手に暗黒の力を収束させていく。

「あんなの受けたら、あいつ死んでしまうわ」

「力を貸して。彼を連れて一旦撤退を……」

 その状況に戦慄するガーネットに声をかけたホワイトルミナスは、回復してきた身体を無理やり立ち上がらせる。

 痛む身体を気持ちで奮い立たせ、純白の翼を広げたホワイトルミナスは、シーモネイターを助けるべく羽ばたかんとする。


「まだ……まだ、だ。まだ、戦える」


「!」

 しかし、その時ホワイトルミナスの耳に届いたのは、シーモネイターから発せられた声だった。


 その身に刻まれた大きな傷のため、弱々しいものの、そこに宿っている闘志には微塵の後れもない。

 死を身近にしても臆することはなく、眼前にいる敵を打倒さんとする意思は、ヒーローとして人々を守らんとする覚悟に満ちている。


「私達は諦めない! どんなに強い敵が相手でも、どんな窮地でも、この世界を、人々を守るために戦う。――それがヒーローだ!」

 弱っていた声を奮い立たせ、振り絞るように声を張り上げるシーモネイターの言葉が大気を打つ。

 それは、自分に向けたものであり、ホワイトルミナスとガーネットに向けたものであり、この戦いを見守っている人々へ向けたものでもあった。


 強大な敵を前にして恐れる心、折れそうになる思い、逃げ出したくなる気持ち――自分を含め、全ての人の心にあるそんな弱さに打ち克つための言葉。


「シーモネイター……白鳥院君」

 傷だらけになっても立ち上がり、臆することなく戦おうとしているシーモネイター――優雅の姿と心を目の当たりにしたホワイトルミナスは、自分の頬を叩いて気を引き締める。

(何をしているの、私。彼を失いたくないからってこんな気弱になって! こんな私じゃ、胸を張って彼の隣にいられないじゃない)

 ゾルグの圧倒的な強さと力を見せつけられたこと。

 傷ついたシーモネイターを見て、大切な人を失うことを恐れて逃げることを考えていた己を戒める。


 確かに、撤退や逃走が必要になる時はある。しかし同じように、命を懸けても戦わなければならない時もある。

 今はどちらなのか、考えるまでもない。


「助けるの。白鳥院君を。そのためには、あいつを倒して守る……!」

 胸の前で拳を握り、自分の気持ちを噛みしめるように口にした瞬間、ホワイトルミナスの胸の中心から光が溢れ出す。

「これは――」

「あれは、アルマの覚醒の光。――ホワイトルミナスに、新たな力が生まれたんだわ」

 その光を見て目を瞠るホワイトルミナスを見て、ガーネットは思わず声を零す。


 ヒーローがその身に宿す「アルマ」は、ヒーローの力の源であり、ヒーローと共に成長する。

 ホワイトルミナスからあふれ出す光は、彼女の身に宿ったアルマがホワイトルミナスこと、星宮雪月の想いに応えて、新たな力を宿した証だった。


「ホワイトルミナス」

 それに気づいたシーモネイターの視線に気づいたホワイトルミナスは、己に宿った新たな力を解き放つ。


「皆! みんなの想いを私に! みんなの想いを紡いで、シーモネイターの力に変えます!」


 純白の翼を広げ、十字の光を顕現させたホワイトルミナスの声が周囲に響き渡る。

 その言葉に誰もがわずかに戸惑いをみせるが、いち早く行動に移したガーネットは、ホワイトルミナスに向けて手を翳す。

「いいわ。私の力。全部あなたに託す」

 瞬間、その意思に応えるようにガーネットの身体から一条の光がホワイトルミナスへと届く。

 ガーネットに残っていた力はもちろん、ホワイトルミナスが言っていたようにその心すらも力となり、翼を広げた天使の元へと集まっていく。

「俺達も」

「ええ」

 それを見ていた人々は互いに視線を交わし、十字の光を束ねるホワイトルミナスに向けてその想いを託す。


「負けないで!」

「頑張って!」


 人々の想いが力となり、ホワイトルミナスへと集められていく。

 ガーネット、暁、エリザベス、人々、そしてホワイトルミナス自身――この場にいる者、あるいはこの場にいない者達からすらも力が集う。


(なるほど。ホワイトルミナスの聖なる光の力は共感の力。仲間の力と共鳴し、さらにその力を増すことができるというわけか)

 その様子を見ていたゾルグは、鋭利な光を宿した視線を向けて牙を剥く。


「面白い。脆弱な人間の力を集めた程度で何ができるのか見せてみろ!」


 ホワイトルミナスの聖なる光の力は、人々を導き、束ね、救いを求めて希望をもたらす力の顕現。

 その力を以て、全ての者の力と心を束ねるホワイトルミナスに、ゾルグはそれと相反するような暗黒の力を奔出させる。


「シーモネイター! みんなの力を受け取って!」


 この場にいるすべての人の心を力へと変えたホワイトルミナスは、その力の全てをシーモネイターへと託す。

 純白の輝きを帯びた七色の光がシーモネイターへと吸い込まれ、その身体を金色に輝かせる。


「これは、力が溢れてくる――! それに、皆の気持ちが私の中に流れ込んで……」


 金色に輝く自分の中に宿った力に息を呑んだシーモネイターは、心を震わせる。


「私たちはみんなを守るために戦っている。けど、私たちに戦う力をくれるのは、私たちが守っている人達なんだ。

 一人一人の生きていく力。人と人が互いを想い合う絆。そうして作られる日常と、皆の笑顔が、私たちヒーローの原動力なんだ!」

 自分に託された力が、人々の希望であることを感じ取ったシーモネイターが、その思いに応えんとするさまを見てゾルグが吠える。


「面白ぇ! ならば、その力を俺が打ち破ってやる!」


 その言葉と共にゾルグは暗黒の力を収束させて破壊の球体を作りだす。

 そこに存在するだけで周囲にあるものを破壊していく暗黒の球体を生み出したゾルグに対し、シーモネイターは地を蹴って空中へ飛び上がる。


「喰らえ!」


 空間を歪めながら向かってくる暗黒の球体を前に、シーモネイターはその身に宿ったすべての力を解放する。


「これが、皆の想いが込められた力だ!」


 その言葉と共に、シーモネイターは暗黒の球体に下半身を向ける。


 ブリッ!


 瞬間、空気を叩く音と共にシーモネイターの尻部から、極大の力が放出される。


 渦を巻くような特徴的な形をした暗黒色の物体。


 それを双眸に映したホワイトルミナス――すべての者達は、心を一つにして叫んでいた。



「そんなものに込めないで!」



屎高之下宝(ウンコ)!」


 肛門部から噴出された渦を巻いた流星がゾルグの放った暗黒の球体と激突し、せめぎ合う力が世界を二分する。

 一瞬の拮抗。しかし次の瞬間、全ての人の想いが込められたウンコが暗黒の球体を破壊する。

「バカな!」

 己の全力を込めた一撃が破壊されたことに驚愕したゾルグは、衰えることなく迫ってくるウンコをその両手で受け止める。

「グ、オオオオオオオオオオオオオオオッ!」

 ウンコの形状をした究極の力の塊を受け止めたゾルグは、渾身の力を振り絞る。

 純然たる力の塊――その余波が触れている腕はもちろん、身体にまでも影響を及ぼしてこの世から滅却せんとしていた。


「私のウンコは概念だ」


「ッ!? な、なにを言っている!?」

 その時、耳朶に届いたシーモネイターの言葉に、ゾルグは理解ができないとばかりに目を見開く。


 身体を構築する細胞、あるいは原子、それよりももっと深い根源的な部分から、ゾルグという存在を滅ぼさんとしている。

 その力に暗黒の力を振り絞って抵抗するゾルグだが、渾身の一撃すらも打ち消したウンコの力を徐々に受け止めきれなくなっていることは明らかだった。


「〝排泄〟の概念の力の具現である私のウンコは、触れたものの力も、能力も、存在も、全てを不要のものとしてこの世界から排泄する。故に、この力の前では、どんな力も無意味だ」

 全力の抵抗を示すゾルグに対し、シーモネイターは指を向けて告げる。


「馬鹿な! たかが人間が概念を司る攻撃を繰り出すだと!? クソが、こんなもので! こんなもので俺が負けるかアアァァァァァア!」


 シーモネイターの言葉が真実であることを否応なく理解し、自らの死を前にしたゾルグは、しかしそれすらをも打破せんと抵抗の声を荒げる。

「――ッ!?」

 しかし次の瞬間、シーモネイターのウンコの力によってその力を「排泄」されたゾルグの腕は力と形を失い、溶けるように消滅する。

 阻むものがなくなったウンコは、成す術もなくなったゾルグに命中し、その存在を究極の力によってこの世から消滅させていく。

「終わりだ。デスバース四天王『ゾルグ』!」


「まさか、この俺が、こんな奴らに――グガアアアアッ!」


 断末魔の叫びと共にゾルグの存在はウンコと共に消滅し、強大な力に畏怖していた世界に静寂が訪れる。

 ゾルグが完全に消滅し、復活する気配すらもないのを見て取ったシーモネイターは、安堵の息を一つ吐いて勝利を高らかに宣言する。


「我々の勝利だ!」


 力強い声で言い放ったシーモネイターは、その視線をホワイトルミナス、ガーネット――そして、戦いを見守ってくれた人々に向けて声を上げる。


「私達だけでは、今回の敵は倒せなかった。この場にいる誰一人欠けても勝利はなかった。あの強敵を倒すことができたのは、皆さんの力があったからです――ありがとう」


 万感の思いが込められた感謝の言葉。

 この場にいる全ての者を称えるシーモネイターの言葉は、皆の胸を打つものだった。


 ――本来ならば。



「……お、お~」

「あ、ありがとう、シーモネイター」


 自分達の想いをウンコに込められてしまったホワイトルミナスやガーネット、全ての人々はこの勝利を心から喜ぶことができなかった。


「お見事です。シーモネイター様!」


 あまりにも微妙な歓声に称えられるシーモネイターの姿を感極まった様子で見ていた暁は、感動のあまりに涙を流す。


 シーモネイターの力によって、デスバース四天王「ゾルグ」は討ち果たされ、世界の平和は守られた。


『皆の想いが込められたウンコが世界を救いましたね』

「言わないで」

 通信から聞こえてくるエリザベスの言葉に、ホワイトルミナスは今にもその場に崩れ落ちそうな様子で呟く。


 決死の戦いを生き残り、強敵を撃破した。

 本来なら、感極まってシーモネイターに抱きついても不思議ではない。

 しかし、その相手は今まさに敵に向けて脱糞をしたばかり。

 その事実を見なかったことにして、シーモネイターに感動的に駆け寄ることなど、ホワイトルミナスにはできなかった。


「私にどうしろっていうの? ウン――こほん、あんな下品な技を見た後で、どんな感動的光景を作り出せるって言うの!?」

 関係を深め、アピールする絶好の機会を前にして成す術のないホワイトルミナスは、魂の抜けたような表情で肩を落とすしかなかった。



※※※



「きゃああああっ」



 耳をつんざくような悲鳴が上がり、多くの人がもつれ合うように逃げ惑う。


 老若男女を問わず、我先にとなりふり構わず走るその姿からは、生死の境に面しているかのような必死さが伝わってくる。


 人々を苦しめるデスバースの侵攻が終わることはない。


 ひと時の安らぎの後には、まだ終わることのない戦いが待っている。


「皆、早く非難を」


 落下してきた瓦礫から少女を守った純白の天使「ホワイトルミナス」が、澄んだ声で呼びかける。

 その時、はるか彼方で生じた火柱が砕け散り、人影がホワイトルミナスの方へと吹き飛ばされてくる。

「く……っ」

「ガーネット。大丈夫?」

 空中で体勢を立て直して着地したガーネットは、自分を案じるホワイトルミナスの言葉に一瞥を向けて言う。

「ええ。でも、私一人じゃ分が悪いわ。力を貸して」

 炎を纏った拳を握りしめたガーネットの要請に頷いたホワイトルミナスは、その手に聖なる槍を顕現させる。


「そこまでだ!」


 その時響き渡った声に、ホワイトルミナスとガーネットは、思わず視線を向ける。

「あれは」

「あれは……」

 ホワイトルミナスとガーネット、人々の視線を一身に背負うのは、鋼の肉体を持つ一人の戦士だった。

 街を一望できるビルの上に佇む鋼のヒーローは、地を蹴って天高く飛び上がると共に、その股間にそびえる剣を高らかに掲げる。


「チンコブレードッ!」





 最強のヒーロー、シーモネイターと、彼と共に戦うヒロインたち。



 彼らの(恋と)平和を守る戦いの物語は、まだまだ続く。





次章予告


「あれは……!?」


突如現れたヒーローは、ピンク色の衣装を纏う美少女だった。


「愛とセイギの戦士! 『エロスティア』見参!」


「ππビーム!」

「見ちゃだめぇ!」


「――『☓☓☓☓』!」


「すごい……危険すぎて、世界がモザイクをかけている……ッ!」


そして現れる強大な敵


「もう、これしかないわ。シーモネイター、あなたの〝接合ユニット〟を私の〝結合ユニット〟に差し込むのよ!」


「え? それってセッ――」


「ああっ! ショックのあまりホワイトルミナスが真っ白になってる!」


「いや、これ絵的にダメじゃないですか? 一応未成年なんですが」

「問題ありません。なぜなら正義のためだから! 他意も深い意味もないから!」



「セーッ、合体クロス!」


「あぁ~んっ」


「ゴホッ」

「ホワイトルミナスが吐血したぁ!?」


「こ、これは……シーモネイターとエロスティアが合体した!?」



「さあ、行くわよシーモネイター!」



「これであなたの下ネタは進化する!」



                                          嘘です

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