第85話 水は大切
現在の時刻は午前七時半。カーテンを開けていても薄暗くて肌寒い。
ネットでの調べ物を中断して段ボールハウスを覗きにいった。ハムの姿を目で追うよりも先に、ケージの横に取り付けてある給水器に目が引き寄せられた。
一日が過ぎても水がほとんど減っていない。
そんなことがわかるのか?
そう問われれば即答する。わかると。
理由は給水器には小さな気泡も入れないようにして水を換えているからだ。そうすることで水の減りが一目瞭然となり、ハムの行動が想像し易くなる。多少、大げさではあるが俺なりの体調管理と言ったところか。
給水器には気泡がなかった。躊躇いつつも水は換えた。浄水器に通しているので水道水よりも傷み易いことが理由に挙げられる。
念の為、給水器の飲み口をチェックした。先端は丸い球体で水漏れがしないような構造になっている。軽く指で押し込むと出来た隙間からじわじわと中身が漏れ出す。詰まって飲めないわけではなかった。
要するにハムは寒さで運動を怠り、おが屑の中に埋もれていた。喉の渇きがほとんどないので結果として水を飲まなかった。そういうことなのだろうと判断した。
人の一日の水分摂取量が二リットルと言われている。食べ物でも水分を得られるので飲料水としては一.二リットルでも良いらしい。
ハムはどうなのだろう。小動物なので㏄の単位になると思う。餌からは残念ながらほとんど水分は得られない。
いや、ニンジンの輪切りがあるか。
瞬時に頭に閃き、早速、ニンジンの輪切りをケージに入れた。
その物音でハムは目覚めた。早々にニンジンを見つけ、前脚で押さえた姿で端から齧り始めた。
安心すると腹が減るようだ。昨晩、食べたキムチ鍋に火を掛け、茶碗に盛ったご飯をレンジで温める。
その合間に頭の中で朧げに浮かぶ作品の構想を煮詰めていった。




