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第79話 新しい方法

 今日は朝から役場に出向いた。相続に必要となる印鑑登録証明書の貰う為に。

 五通いるので千五百円を支払った。意外と高くついた。七本のビール缶が頭の中に浮かんだ。

 雨の中、折り畳み傘でとぼとぼと帰る。帰り道にある郵便局に立ち寄って必要な書類と一緒にレターパックで行政書士に送った。

 二時間弱で家に帰り着いた。雨と汗ですぐに風呂に入りたいのだが、閉め切った部屋が意外と蒸し暑くてハムの様子を窺った。

 段ボールハウスの中にはいない。ケージの中にいた。

 ハムは餌(えさ)の容器にもたれ掛かっていた。目は細められていたが完全に閉じられてはいなかった。眠っている訳ではないらしい。

 ついでに容器の中身に目をやると、かなり餌の量が減っていた。明日の朝まで保たないような気がする。

 毎回、容器を取り上げて補充を行うのだが、太々(ふてぶて)しいハムが邪魔になる。強引に進めると恨みを買いそうだ。


 何、取り上げてんだ? リンゴの枝と同じ目に遭わせるよ?


 艶やかな黒目で脅しを掛けてくるに違いない。甲斐甲斐しく世話をする俺の指を狙い、血が出るまで噛み付く姿が目に浮かぶようだ。

 そこで今までにしなかった方法で餌を補充することにした。

 まずはミックスとグラノーラを適度に混ぜたものを掌(てのひら)で受ける。ケージの蓋を開けて餌の容器に掌を近付ける。

 即座にハムが反応。顔を上げて鼻をヒクヒクさせた。怖がらずに容器の中へ掌の餌を注ぎ込む。

 ハムは指を気にしつつ容器に顔を突っ込んだ。気に入ったものがあったのか。そのままの姿勢で音を立てて食べ始めた。

 一度も指を噛まれず、餌の補充を終えた。この方法で慣れさせれば噛み付かれることはなくなり、手への嫌悪感も解消される。そうなれば手乗りも不可能ではない、ような気がする。


 手だけに意外と良い手に思えるのだが、どうだろうか。

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