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第77話 手乗りに挑戦

 最近のハムは大人しいように思える。日中、夜間、どちらもよく寝ている。違う観点で言えば弱っているとも言えるのだろう。我が家に連れてきて二年くらいなので、そのような内容が頭を過る。

 暗い未来を想像しないように今をポジティブに考えてみる。現状であれば下手(したて)に出れば掌(てのひら)に乗せられるのではないだろうか。

 思い立ったが吉日という言葉を信じてケージで蹲(うずくま)るハムに手を差し出した。場所が狭いので段ボールハウスの方へ誘導する。

 ハムは鼻をヒクヒクさせてそろそろと這い出した。俺は思い切って手の甲をおが屑の中に軽く沈めて指先を動かし、さらに誘う。


 仕方ねぇ、主(あるじ)だな。


 ハムは億劫そうに近付き、動かしていた中指に噛み付いた。意図を読み間違えたのだろうか。思い直して今度は指を止めた状態で、こっちにおいで、と声で呼び掛けた。

 今度は薬指に噛み付いた。少し強めもあって手を引っ込めた。伸びる前歯のケアが先と思い直し、リンゴの枝を新たに投入した。俄然、ハムは興味を示し、無心で齧り始めた。

 一箇所では物足らず、何か所も前脚で押さえて齧り付く。その音が耳に聞こえた。

 そこでまたポジティブな考えが頭に浮かんだ。


 このくらい強く噛まれたら血が出る。俺の時は甘噛みだったんだな。


 違うかもしれない。が、そのように思えば少し心が安らぐ。徐々に慣れてきたのだと思い込める。

 寿命が尽きる前にハムが自発的に掌に乗ってくれることはあるのだろうか。

 あると信じてこれからも世話をする。どちらが主なのか、よくわからないが。

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