第73話 ニンジンの話
我が家のハムの好物はヒマワリの種とカボチャの種。少し離されて輪切りのニンジンが加わる。
二日前に入れたニンジンはどうなったのか。段ボールハウスを窺うとケージの中で見つけた。縁を齧った跡は見られるが、ほぼ全部が残されていた。
美味しくなかったのだろうか。仕方がないので取り出して庭のコンポスターに入れた。
その足で冷蔵庫の野菜室から問題となったニンジンを取り出した。葉の生える太い部分を薄く包丁で切った。生の状態で齧ってみる。
繊維が多くて水気が少ない。よく噛んでもあまり甘味は感じなかった。美味しくないニンジンに当たったようだ。
そこで真逆のニンジンの先端部分を切った。傷のある部分は包丁で取り除き、軽くレンジで温めた。指で摘まむと人肌くらいの温度になっていた。
どうだろうか。
同じニンジンではあるが部位は違う。多少、味は改善されたと思いたい。
そこでケージの蓋をそっと開けた。中で丸くなって眠っているハムの近くにニンジンの先端を置いた。
その状態で様子を見ることにした。黙って見続ける時間はないのでPBWの執筆に取り掛かる。
三十分が過ぎた頃、何かを齧るような音が聞こえてきた。ノートパソコンから離れ、段ボールハウスにあるケージを見てみた。
日中にも関わらず、ハムはニンジンの先端を前脚で押さえ付けるようにして齧っていた。部位が違うだけで味は格段に向上したようだ。あとレンジの力もあるのか。
ニンジンに夢中になっているのでケージに蓋をした。全く気付いていない。ひたすら齧り続けていた。
ニンジンは部位によって味が変わる。
今日の学びであった。ハム以外ではあまり役に立たない知識に思えるが。




