第68話 深夜に目が覚めた
深夜、激しい雷雨に見舞われた。瞼を閉じていても光を感じる。横向きになっても眠れない。仕方なく上体を起こした。
落雷のような音はしなかった。が、障子は頻繁に強い光に晒された。数秒後、重々しい音が和室に響く。
視線は窓際の段ボールハウスへ向かう。今晩はハムが大人しい。齧る音や引っ掻く音が全く聞こえて来ない。
四つん這いで近付き、そっと上から覗き込む。
ハムはケージの中にいた。横向きで丸まって寝ているようだった。
そこでふと思う。
ハムは夜行性なのでは。
よく見ると身体が小刻みに動いている。また障子が光った。遅れて重苦しい音に見舞われた。
ハムは起きない。怯えて縮こまっているかのように横になっていた。
その時、過去の出来事を思い出した。
以前、クロスバイクで走っていると突然の夕立に襲われた。雷雲を伴っていたので木々に挟まれた山道へと逃げ込んだ。
早々とクロスバイクを横倒しにした。俺も身を守る為、側にしゃがみ込んだ。
五分くらい経つと心に余裕が生まれた。周囲に目を向けると一本の木の枝に目が留まる。枝の半ばに羽を畳んだ小さな鳥がいた。身じろぎしない姿は木製のオブジェのようだった。
十五分が過ぎた。雨の降りが弱くなり、それに伴って雷が遠ざかる。
鳥は瞬く間に飛び立った。民芸品の彫刻などではなかった。
今のハムとあの時の鳥が重なって見える。眺めているとモゾモゾと動き出した。
雷は収まっていないがケージの蓋を開けた。ミックスの袋からヒマワリの種を摘まみ出し、ハムの口元に近付ける。
当たり前のように人差し指を噛まれた。取り落とした種は口に咥え、ケージの奥で食べ始めた。
また障子が光った。腹を下したような音が鳴ってもハムは動じず、口を動かし続けた。
どうやら俺の勘違いだったらしい。




