第67話 無言で暴れる
冷蔵庫の野菜室に寝転んでいた腰の曲がったネギを刻み、棒ラーメンの具にした。それだけでは味気ないので乾燥ワカメとキムチをトッピングとして加えた。
完成した物をズルズルと啜り、汁まで飲み干す。空になったドンブリはシンクに運び、音波歯ブラシで歯磨きを終えた。
一息ついたところで愛用のノートパソコンを起動させた。すると斜め後ろの方からガリガリと齧る音が聞こえてきた。段ボールハウスに目をやり、再び画面に目を移す。長編の続きを書こうとした矢先、指が固まった。
齧る音がやんだ。耳を澄ましていても何も聞こえてこない。少し気になって重い腰を上げた。
足音を立てずに近づき、そっと上から覗き込む。段ボールハウスの四隅にハムの姿はなかった。ケージの中と思い、身を屈めた。
餌の容器に背を預けたハムがいた。胡坐を掻いて座っているような姿に見える。目は完全に閉じられておらず、細い状態で開いていた。
俺はハムに向かって軽く手を振った。全く反応しない。見えていないようだ。
そのハムを見ていると予備動作なく、唐突に仰け反った。すぐに元の姿に戻る。
呆けたような姿を晒し、突然、横倒しになった。前脚で顔をしごき、また胡坐の姿勢となった。
そこからは修行僧のように身動きをしなかった。
俺はその場を離れ、ノートパソコンと向き合う。
ハムスターは夢を視るのだろうか。
頭の片隅に思いつつ長編の続きを書き始めた。




