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第63話 ハムはどこに?

 早朝の五時前後には決まって目が覚める。低血圧ではないのですぐに起きて愛用のノートパソコンを起動。着信メールの有無を調べ、『国内、国外』のニュースに目を通す。

 何もなければ長編の続きを書き、合間の気分転換で新作PBWのシナリオの構想を練った。

 昨晩の酒のせいなのか。喉の渇きを覚え、一階の浄水器で水をがぶ飲みする。一息入れると部屋はとても静かで物思いにふけそうになり、慌てて気を引き締めた。

 二階の自室に戻る前に和室の様子を窺う。何かを齧るような音は聞こえてこない。最近のハムは活動的なので『脱走』という言葉が頭に浮かんだ。

 足音を立てずに近づき、段ボールハウスの中に目を注ぐ。

 四隅にはいなかった。ビリヤードのポケットに似た一つにニンジンが転がる。輪切りの状態が想像できない程、齧られていた。

 ケージの裏に目がいく。細長い状態で紙が集められていた。試しに息を吹き掛けたが反応はなかった。いよいよ脱走の線が濃くなる。

 その場で耳を澄ましたが何かを齧るような音は一切ない。和室を区切る障子は開けられていたので、もっと遠くまで逃げた可能性が急浮上した。電化製品のコードを齧られては堪らない。

 その時、ケージの中から微かな音がした。丸っこい背中の一部が露わになった。

 ハムはトイレ用の容器に紙を大量に突っ込み、その中に埋もれるようにして眠っていた。じっと見ていると底の方にある砂を前脚で掻くような動きをした。夢の中を走り回っているのだろうか。

 まずは一安心。そっとケージの蓋を開けて別の容器に餌を補充。取って置いたカボチャの種を適当に散らした。給水器の中の水も入れ替えた。

 蓋を取り付けてもハムは起きない。身を震わせて紙に包まれようとしていた。

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