第62話 活動時間が長い
朝、和室に置かれた段ボールハウスを覗き込む。ハムが給水器に齧り付いて水を飲んでいた。食欲旺盛で容器に餌を継ぎ足した。
昼過ぎ、やはりハムは起きて走り回る。俺の姿を見つけると後脚で立ち、前脚を上げながら不安定によろけた。なんのポーズか分からず、ぼんやりと眺めていると段ボールハウスの壁に当たる部分を前脚で何度も引っ掻いた。
夕方、やはりハムは起きていた。毛づくろいに夢中で俺に気付かない。前脚で顔を挟むようにして擦る。終わると後脚で左右の耳の辺りを掻いた。それだけでは満足できないようで前脚を舐めては腹部の辺りを掻き毟る。
俺が晩酌を終えてもハムは活動をやめない。夜行性なのでこれが本来の姿と言える。では、日中の躍動感の意味とは。
そこで思い出した。段ボールハウスに敷き詰められた抗菌作用のある紙は冬用であることに。よく見るとハムの寝床に紙はあまり盛られていなかった。しかもくつろぎスポットを頻繁に変えているようだ。
段ボールハウスの四隅が特にお気に入りらしく、カボチャの種の殻がちらほらと落ちていた。最近ではケージの中にも進んで入る。回し車の中で仰向けに寝ていることもあった。
全てが暑さのせいと考えれば合点がいく。
夏用のおがくずに変える時期がきたようだ。ホームセンターにあることは知っているが電車を乗り継ぐ必要がある。山を一つ越えた先に大型スーパーはあるが、車の移動手段を失った俺にはハードルが高い。徒歩による往復で二時間弱といったところか。
俺はケージの中にいたハムへ語り掛ける。
「まだ、いけるよな?」
反応したハムは立ち上がり、壁に穴を開ける勢いで引っ掻いた。
その様子を見て微笑み、おやすみ、と口にして和室の照明を消すのだった。




