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第56話 なんか寒い?

 昨晩も縁側で熱燗をカッ食らい、その勢いで布団に潜り込んだ。珍しく朝の六時台まで寝た。布団の中にいても寒さを感じる。

 そこで軽く驚いた。ここ最近は暖かくビールが大活躍した。もう寒さがぶり返すことはないだろうと思っていた。

 その日の朝がこの寒さ。さらに昨晩の行動が追い打ちを掛ける。


 ハムにカイロを入れてやらなかった。


 慌ててドテラを羽織り、一階へ駆け下りた。脇目を振らず、和室の窓辺に置かれた段ボールハウスを覗き込む。ハムの姿はなかった。右端の紙の山に埋葬、いや、安らかな寝顔で埋まっているはずだ。

 俺は紙の山に息を吹き掛けた。二度、三度と続けても動きが見られない。夏の名残りの団扇(うちわ)を取り出し、全力で扇(あお)いだ。十秒ほど続けて様子を窺う。ピクリとも動かない。

 俺は続行した。先程の倍の長さで扇ぎ、顔を近付けた。紙の一部が盛り上がった。激しさを増してハムが顔を出した。俺と目が合うと鼻をヒクヒクさせた。


 今のはお前だよね? 噛まれたいの? 激しく噛んで指を血塗れにするよ。


 黒い艶やかな目で静かに恫喝(どうかつ)してきた、ように感じた。ひとまず、ほっとした。ケージの中の餌が減っていたので容器から殻を取り除き、餌を補充した。

 その間にハムは飛び出した。後ろ脚で立つと段ボールハウスの壁を前脚で懸命に掻きむしる。餌を盗られたと思っているようだ。

 こんもりとした中身をケージに戻すと挨拶代わりに親指を噛まれた。その後は顔を容器に突っ込んで食べ始めた。


 元気な姿を見て少し和んで一日が始まる。

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