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第55話 昨晩の話

 大抵、ハムの餌は朝に仕込む。昨日は元気が有り余っていたようで晩には容器の餌が底を突き掛けていた。

 ハムスターは夜行性でもあるので補充した方がいいだろう。その判断でストックしていたカボチャの種を入れた。ミックスフードをざらざらと加える。その物音に反応したのか。ハムが紙の山から顔を出した。黒い両目で俺をじっと見つめる。

 この間(あいだ)、俺の手に乗った。信頼関係を築けたと多少の自信が付いた。

 そこでハムの視線よりも低いところに手を差し出す。すると怯えた様子もなく真っすぐに近付く。躊躇(ためら)う素振りも見せないで掌(てのひら)に乗った。

 満足して眺めていると親指の側面を噛まれた。付け根も噛んだ。去り際に小指に噛み付いた。

 その部分を見ると二箇所で血の玉が浮き出す。ハムはこちらをちらりと窺(うかが)うと紙の山に頭から潜り込んだ。

 甘噛みの加減がわからなかったのだろう。俺は血が浮き出た左手を洗面所で水洗いした。念の為に傷口を押して血を出し、さらに水で洗い流す。殺菌力の高い泡石鹸も使った。

 傷口は浅くてすぐに血は止まった。

 二階の自室にいく前に段ボールハウスを覗き込む。ハムはケージの中にいた。餌の容器に頭を突っ込み、何かを貪り食っていた。

 空腹のせいで俺の指がオヤツに見えたのだろう。自分に言い聞かせて二階へすごすごと上がっていった。

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