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第52話 残り物

 ニンジンの先端が残った。冷蔵庫の野菜室を開ける度に前後に転がる。実に邪魔で今のところ、使い道がない。今晩はすき焼きを予定しているのでやはり使えない。

 そこでハムが思い浮かんだ。ニンジンは種ではない。もちろん果実でもなかった。有害ではないと判断し、即座に餌(えさ)として与えることにした。

 俺はニンジンの先端を摘まんで段ボールハウスを覗き込む。昼間の時間帯もあってケージの中にハムはいなかった。聖地のカマボコ板にもいない。対面の角の穴を齧る姿も見られない。

 自然と右隅の紙の山に目が向かう。裾野の位置に出入りしている穴がある。そこにニンジンの先端を置いた。

 寒さもあって今は出て来ないだろう。その場を離れて軽めの昼食を済ませた。


 空が赤く滲む頃、俺は執筆の手を止めて一階へ下りる。結果を期待して真っ先に段ボールハウスへ向かう。

 そっと見るとニンジンの位置が違う。先端に齧った跡があった。これは使えると内心でほくそ笑んだ。

 その後、見る度にニンジンの位置が変わった。リスのように埋める行動も見られたが、忘れることはなかった。

 最後は跡形もない。全部、平らげたようだった。

 我が家ではニンジンの需要が高い。味噌汁の具になる。カレーやクリームシチューには欠かせない。出汁巻き卵に微塵切りで入れることもあった。

 ハムにしても新たな一品が増えて喜んでいるに違いない。正月用に大量に買い込む金時人参が余れば試してもいいだろう。

 ハムのお節、とまでは言わないが。

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