第43話 気分の問題?
今日の朝のハムはガリガリとは違う。カサカサとカリカリの間のような音を立てていた。何かの催促だろうか。
段ボールハウスを上から覗いて見ると右奥にいた。積み上げた木屑は蛇が這い回ったような窪みが出来ていた。昨日の綺麗な富士山のような形は見る影もない。
肝心のハムは右奥を起点にして木屑を撒き散らしながら進んでいる。背中に掛かる木屑は前進することで払い落とされた。それでも飽くなき執念で掛けようとして躍起になる。
まずは木屑を一か所に集める。綺麗な富士山を作った後で火口部分に潜り込めば解決する。それがハムにはわからない。前進しながら背中に掛けようとして失敗を繰り返していた。
いつまでこの虚しい行為が続くのか。俺は黙って見ていた。手元の時間で五分が過ぎてもやめない。ひたすら前進。前脚で木屑を巻き上げる。
その動きが止まった。急に駆け出し、ケージに飛び込む。後ろ脚で立って給水口を前脚で掴む。先端をカリカリと齧るようにして水を飲み始めた。さすがに疲れたようだ。
喉が潤うと餌の容器に顔を突っ込んだ。その姿勢で何かを齧り出す。前脚で掻き分けてヒマワリの種を落とした。
微笑んで眺めていると砂の容器の中に入った。前脚で掻いて満足したのか。用を足さずに出るとケージの中でうずくまった。円らな瞳が見る間に細くなる。
右奥の木屑の件はすっかり忘れて完全に目を閉じた。移り気で忘れやすい。ストレス知らずが羨ましいとさえ思える。
今日もしっかり食べて俺なりに頑張るとしよう。




