第38話 怖い寝方
八月下旬ではあるが真夏の暑さが続いている。天気予報によれば九月も引き続き暑いらしい。
自前の毛皮を着たハムは相当に堪えているのだろう。いつ見ても寝ている。その寝相の悪さはかなりのもので時にドキッとする。
糞尿用の容器の砂の中で丸まって寝ていた。ヒマワリやカボチャの種を持ち込んでは齧りながら眠る。その欠片がそこかしこで見られた。この程度であれば驚くことはない。
回し車の中で俯せに寝ていても理由は何となくわかる。肉体的に疲れて眠っているのだろう。あと涼しさも関係しているように思う。
段ボール箱の四隅も定番の寝場所となっていた。カマボコ板で補強した底はベッド代わりによく寝そべっているのを見かけた。
今日はそれらとは違う。ケージの中に入れた餌の容器をやや動かし、できた僅かな隙間に横向きに挟まっていた。下になった横腹は微妙に浮いている。
一瞬、寿命を想像した。野良ハムを保護したのは今年の二月。家で飼い始めて半年は過ぎている。その前の情報がないので正味の年数は不明となっていた。ちまたでは最長で三年と言われている。
心配になったのでハムの上になった腹部に中指で触れてみる。物凄い速さで先端を噛まれた。
その後は何事もなかったようにケージの中を動き回り、左右に開いた扉から急に飛び出す。右奥の隅の寝床に突っ込み、横向きで丸まった。艶やかな黒い瞳は徐々に細くなってゆく。本格的な睡眠に入るようだった。
噛まれた中指の先端を摩りながら、長生きしそうだ、と半笑いで独り言ちた。




