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第30話 綺麗さっぱり
今日の執筆を終えた俺は二階から駆け下りる。目当てはもちろんハムである。ケージの中に溜めた段ボール箱の紙片はどうなったのか。破く範囲を広げて新たな拠点を作り出しているのか。
脳裏に過る想像に半ば興奮してケージに目を落とす。期待の紙片が見つからない。僅かに残っていた白い紙も無くなっていた。ハムが持ち出したと思い、段ボール箱の隅々に目をやった。
紙片や紙は見つからず、右隅の奥に木屑に埋もれたハムが目玉焼きの状態で寝ていた。脳内に誤食の文字がチラつく。
瞬きを忘れてハムを見ると浅い呼吸をしていた。でっぷりとした腹部が小刻みに動いている。
ほっとしたが紙片や紙の行方が気になる。キッチンで洗い物をしていた母親にそれとなく話を振ってみた。
「ケージの中がさっぱりしてるんだが」
「ヘンな紙が散らばっていたからねぇ。お兄ちゃんの代わりに掃除をしておいたよ」
なるほど、そういうことか。新たな拠点は遠のき、ハムも自分が起こした行動を忘れてしまうだろう。
俺は改めて段ボール箱の側面に注目した。紙が横に大きく破けて中身の縦線が見えていた。
早々に内側にカマボコ板を貼り付けようと思った。寝ているハムを無理矢理、起こしてケージに閉じ込めるのは酷なので、その時がくるのを待つとしよう。
新たな拠点は築かれる前に終わった。




