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第29話 初めての行動

 ハムが段ボール箱の隅を齧る行為は見慣れた。伸び続ける歯が原因なのだろう。あとは脱走の楽しさが忘れられないのか。どちらにしてもハムなりに意味のあることなのだろう。

 俺は昨晩の行動の痕跡(こんせき)を見ようと朝一で段ボール箱を覗き込む。

 浅く削られた角に目立った変化は見られない。代わりに側面が大きく剥(はが)されていた。初めての行動に少なからず驚いた。

 ハムはケージの中にうずくまる。周囲に細かく千切った薄茶色の紙が落ちていた。よく見ると、それは段ボール箱の一部であった。ただ、齧るだけではなく寝床の素材として利用していた。もしくは遊び道具として使ったのか。

 ほぼ飼い主の俺の考えを吐露(とろ)すると、うちのハムちゃん賢いのぉ、と言いたくなる。甘ったるい声で友人知人に電話を掛けまくりたい。そんな未来の自分が寒々しくて身体が震えた。

 もしもの為にカマボコ板は外側に貼り付けた。内側の部分は何も弄らない。先の展開をこの目で見たいという欲求の方が勝った。


 明日以降のハムの行動に目が離せない。

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