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第28話 仮の姿
最近のハムは大人しい。ケージの蓋を取り付けたことで足場を失い、跳んで逃げる方法が使えなくなった。試すこともない。その名残なのか。時に排泄用の容器の上で縮こまっていた。
段ボール箱に敷き詰められた白樺の木屑にも慣れたようだ。元気に走り回っている。眠くなるとふかふかの寝床で丸くなった。
今朝のハムはどうだろうか。朝食前にそっと覗き込む。
左側の手前の角を齧っていた。暴れるような格好ではなく頭を傾けた状態で固定。ピンポイントを心掛ける。
その行為を中断して前脚で顔を拭い始めた。側面の一部を見ると三日月のように綺麗に反り返っていた。
身だしなみを終えたハムは角と向き合う。ガリガリと齧る姿が頭に浮かぶが、そうはならなかった。
反った部分を咥え、後ろに引っ張る。とどめとばかりに頭を振ると簡単に千切れた。その脆くなった部分を狙って突っ込む。全身ドリルとなって猛烈な勢いで齧り始めた。
野良ハムの気質は失われていなかった。知恵を付けて戻ってきた。
板のストックは、あと二枚。我が家のカマボコの消費量が増えそうだ。
たまの贅沢で鱧入りのカマボコでも買うか。




