第23話 何がなんだか
現在、段ボール箱のハムが行方不明。脱走経路を塞いだつもりが逃げられた。
昨晩なのか。明朝なのか。それさえもわかっていない。部屋を隈なく探しているが発見には至らない。隙間が多い家もあって作戦を切り替えた。
喉の渇きや空腹に耐えられなくなるまで待ちの姿勢を貫く。野良ハム時代は整骨院の出入口で粘って母親に拾われた。
限界がくれば俺や母親に助けを求めて自ら現れるだろう。家にいると仮定した場合なので、外まで逃げていれば『帰らぬハム』となる。この地域にはかなりの数の野良猫がいる。空ではトンビや鷹の猛禽類が巡回中。
逃げ回るハムは地上や空から狙われ、餌として食べられる運命にある。
今は『帰らぬハム』にならないように待つしかない。新たな展開があれば続報として『うちのハム』に書き足す。何もなければひっそりと完結を迎えることだろう。
それでは、また。
飲食を断つ方法でハムを炙り出す。三時間前に決めて置きながら部屋中を探してしまった。二階まで疑い、わざと音を立てても飛び出して来ない。無駄骨の見本としか言いようがない。
顎先から汗が滴る状態で続きを書いている。この作戦はハムに有効だが、俺にも効いた。他の作品を落ち着いて書けないという不幸を呼び込む。
早く見つけないと俺の身が持たない。とは言え、母親のように猫撫で声で、ハムちゃ~ん、と呼び掛けたりはしない。
絶対だ。したとしてもここには書かない。まあ、気が向けば書くかもしれない。
その前にハムが出てくればいいのだが……素麺を茹でるか。
たった今、ハムを捕獲。キッチン横にあるキャスター付きのミニテーブルの下に潜んでいた。ジャガイモを入れた箱の中に紛れ、幾つか齧られていた。逃げられる前に箱ごと持ち上げ、急いで段ボール箱の中へ放した。
もちろんハムはケージにまっしぐら。餌を入れた容器に頭を突っ込んで食べ始めた。
齧られたジャガイモは今日中に処理する。熱帯夜の中、汗だくでカレーを食べる姿が目に浮かぶ。
これからも連載は続く、やれやれ。




