第15話 寝床を求めて
ハムの寝床はころころ変わる。
定番で言えば段ボール箱の四隅。齧ることによるリフォームで快適なのだろう。
暑い日は古巣のケージを好む。敷いた紙を前脚で掻き、露出したプラスチックに腹を押し付けて眠る。
排泄用の砂の中でも寝ていた。その中にカボチャの種を持ち込み、ひっそりと食べることもある。プラスチック製なので丸見えなのだが。
これらには特徴があり、全てが『狭い』で統一されていた。先祖の遺伝子が受け継がれているのか。穴蔵のようなところに執着しているようだ。
今朝のハムは回し車の中で寝ていた。横向きで丸くなるスペースがないので俯せになっていた。顔の部分を下に潜らせるようにして縮こまる。よく見ると横っ腹が外側に食み出していた。
ここは『狭い』に該当するのだろうか。足場は細いが外側は大解放でバランスを崩せば転げ落ちる。十センチ程度の高さなので問題はない。寝心地の良さも悪くないのだろう。糸目で微笑んでいるように見えた。
今の内に餌の補充をしよう。ケージの隅に置かれた容器を静かに取り出す。ひまわりの種の殻を摘まんで捨てる。押し込まれた紙も取り除き、ミックスフードを中へ流し込む。ひまわりの種も入れる。カボチャの種は上から撒いた。
僅かな隙間を利用してイリコを差し込み、ケージの隅に置こうとした。
「またか」
容器の置き場所にハムがいた。後ろ脚で立ち、ケージの壁を前脚で引っ掻く。寝起きとは思えない程の興奮を見せた。
俺は遠慮なく容器を下す。後ろ脚で立ったまま下がろうとして派手に転んだ。仰向け状態で容器に前脚を引っ掛け、強引に中へ入り込む。暴れるようにして物色するせいでポロポロと中身が零れた。
あとは俺を無視して好き放題に振る舞う。カボチャの種を齧り、ひまわりの種にも手を伸ばす。イリコは先っぽを食べて見向きもしない。餌を掘り進めて気に入った物をパクリと咥えた。
ハムは朝から食欲旺盛だ。俺はさっぱりと茶漬けで済ませた。
深酒のあとは特に胃に沁みる。呑み過ぎは身体に悪いと自覚していても、この朝の一時が堪らない。すでに頭は今夜の晩酌について考えていた。




