第13話 死んでいる!?
我が家の二階は相当に暑い。屋根に入れる断熱材を惜しんだせいなのか。夏場は特に厳しい。嬉しくない自家製サウナとなる。
その中、苦行僧となって執筆に励む。キーを打つ指が汗に塗れてヌルヌルする。壁の木材が乾いた音を立てる。霊が関係したラップ音とは思いたくない。今の季節は春だが五時間も部屋に籠っていると喉が渇く。
突き上げるような欲求に負けて一階へ下りた。冷蔵庫に直行。ビールは避けて野菜ジュースの缶を開けた。トマトとセロリの味の主張が強い。後味はレモンで悪くなかった。
この暑さ、一階にも多少の影響を与えていた。そうなると自前の毛皮を着ているハムが気になる。足音を立てずに段ボール箱に近づいて、そっと上から覗き込む。
一目で衝撃を受けた。ハムはケージの中にいた。排泄用の容器と壁に挟まれた位置に仰向けになっていた。頭の中に『死』という文字が過る。ぴくりともしない。
それに腹部を見せる行為は相手への服従を意味する、と何かの話で読んだ記憶がある。犬の話だったろうか。
俺は怖々とハムの腹部に人差し指を伸ばす。そこで思いとどまる。生々しい感触を嫌って別の方法を選んだ。
大きく息を吸い込み、突き出した口でハムに息を吹き掛けた。
直後に飛び起きた。周囲を見回し、俺に目を留めると後ろ脚で立ち、プレーリードッグを気取る。またおまえか、と黒い艶やかな目が語る。
再び口を尖らせて息を吹き掛けるとハムは後ろへ倒れ込んだ。もがくように起き上がると、そのまま走ってケージを飛び出す。右角の紙の山に頭から突っ込み、丸い尻尾を振りながら潜って見えなくなった。
実に紛らわしい。ハムの放浪期間がわからないので寿命もはっきりしない。ほぼ飼い主である俺の要望としては、限界まで生きて欲しい。読者が歓喜するようなネタを惜しみなく提供して貰いたい。できれば星も。
そのような切なる願いを知らず、ハムはガリガリと角を齧り始めた。




