30.ウソをつくとためにならないぞ
小さな店のなかには所狭しと骨董品が並べられていて、壺やら掛け軸やら得体の知れない人形やらが、本当に値札どおりの価値があるものかデシーカにはわからなかった。
「店主、すまないが聞きたいことがある」
「商品の価値もわからんのに店にくるなよ、耳長」
カウンターの向こうで気だるそうに座っているガウロン人の男は、こちらを一瞥すると吐き捨てるようにして言った。
「ああ、まったくだな、蜥蜴野郎」
デシーカは近くにあった壺を手に取ると、そのまま床に叩きつけた。
「なにしやがる!?」
血相を変えて飛び出してきた男の胸ぐらを掴むと、デシーカは力任せに絞めあげた。爪先が床から離れそうになり、男がじたばたともがく。
「おっぐぇ……!」
「私が聞きたいことは、骨董品の価値ではないんでな」
凄みのある声を男の耳元に浴びせると、突き飛ばすようにして放り出す。
男は陳列されている骨董品を巻き込んで、床に転がった。
商品がひっくり返る派手な音が響き、目を白黒させた男がわけもわからず叫んだ。
「なんなんだ! おい! くそったれが! 俺は警察とも親しいんだぞ!」
「奇遇だな。私も警察とは親しいんだ。ここにあるものは押収品の横流しだろう?」
デシーカは軽い口調で肩をすくめると、床の男と目線を合わせる。
碧眼は美しくも酷薄で、男はそこにある恐ろしさを直感的に理解したようだった。
「ひっ……!」
引きつった声をもらし、床を這うようにして店の入り口に向かう。
だが、そこにはもう一人の女がいた。小柄なガウロン人で、地味な眼鏡をかけている。
「あなたが知り合いの警察に駆け込む前に、少しお話をしましょうか」
ロレッタは床に這いつくばる男に近づくと、無造作にその背中を踏みつけた。
背骨が軋む痛みに、男がくぐもった声をもらす。
小柄な体躯に似合わず強い力で、男は床に張りつけられたようにして動けなくなる。
「聞きたいことはひとつだけだ」
デシーカは煙草を咥えて火を点けると、紫煙を吐き出しながらしゃがみ込んだ。
男の髪を掴んで顔をあげさせると、指に挟んだ煙草の先をほとんど目に触れそうな距離にまで近づける。紫煙が目に沁みて、男が涙を流した。
「おい! やめてくれ! なんなんだ! あんたらは、なんなんだよ!」
「警察から横流しされた魔術刀を知っているか?」
「知らねえよ!」
デシーカは煙草を男の右目に押しつけた。
「っっっっっっ――――――――――っ!」
眼球が焦げる痛みに男が絶叫した。
力の限りもがくが、踏みつけているロレッタの足はびくともしない。
「ウソをつくとためにならないぞ。次は左目だ」
「ウソじゃねえ! ウソじゃないです! 本当になにも知らないです! ああ、くそったれ! なんで俺がこんな! くそ!」




