第72話 因縁の終わり!
どうも、秋水です。
今回で、雪咲と玲那の関係を終わらせようかと思っています。
また再登場するかは、ストーリー次第ですが(苦笑)
”お兄ちゃん……”
そう呟く少女の顔は何処か悲しげで、今にも泣き出しそうだった。だが雪咲の方は、今にも逃げ出したい思いでいっぱいだった。必死に吐き気を堪え、引いていく血の気を止めようとしていたが止まらず、いつの間にか顔色は死人同然に真っ白になっていた。
「何で……」
”当たり前でしょ、私達は兄弟だもの……いつも一緒だよ”
「違う……!玲那は……俺を見捨てて伯父さんと遠くへ行ったはず!その時点で俺とは関係ないだろう!」
”見捨てたのはお兄ちゃんでしょ?帰ってきたのに家は売っちゃうし、荷物は残しておいたもの全部捨てちゃうし……”
「大体、俺は行かないって何度も言った!忠告も多少なりとした!それなのに、いきなり帰ってきたと思えば……!」
”知ってる?私が伯父さんの家でどういう暮らしをしていたか……”
消え入りそうな声で呟く少女は、既に涙を流していた。悲しげに、だけど憎々しげに泣いていた。その顔を見た雪咲は、悍ましささえ憶えた。
”散々酷いことされたよ……生活費出す代わりに抱かせろとか、言う事聞かなければ殴られ蹴られ、お兄ちゃんの所に戻りたくて近くの高校探していたら却下され、あまつさえその理由が”遠くに行かれたら手が出せなくなる”だよ!?それでお兄ちゃんに助けてもらいたかったのに……家は売られているし、お兄ちゃんは皓さんと楽しくやっているし……!”
「俺はその件に関しては謝ろうとした、だけどそれを聞く耳持たずで責め立ててきたのはお前だろ!」
”うるさいっ!何でお兄ちゃんだけ幸せなの……?ずるいよ、不公平だよ……!!同じ兄弟なのに、どうして!?”
「皓はお前にもちゃんと接していたのに、まともに相手にしてなかったからだろ!」
話していく内に、玲那の言葉が聞き取れなくなっていた。まるでフィルターでも掛かっているか水中にでも居るかのように、音が籠もっている感じがする。次第に玲那の涙は赤黒くなっていき、血のようにも見えた。体もボロボロになっており、見るに堪えない状態だった。
その状態を見た雪咲は、言わずも理解していた。玲那が罵倒して何処かへ行ってしまった日、心の何処かで今まで暮らしていた妹はもう何処にも居ないことを。そして目の前でお兄ちゃんと言っている女性は、玲那の皮を被った”何者”かということも。それでも、脳裏を過った最悪の結果だけはどうしてもイメージしたくなかった。気がつけば、言いたくもない言葉が勝手に口から溢れてた。
「何でお前の為に働いていたのに責められなきゃいけないんだ!?何で全て俺のせいにするんだ!?寂しい思いをさせていたのは理解しているし謝る、だけど生きていくためには仕方のないことだって理解していただろう!?」
溢れ出した言葉は止まらず、気付かぬ内に涙を零しながら叫んでいた。途中女性は”嘘だ!”とか”煩い!”と叫んだ。しかし、一度付いた勢いは中々止まらなかった。その勢いを止めたのは、何処から現れたのかアメノウズメだった。背後から雪咲を優しく抱きしめ、泣き叫んでいた筈の雪咲はアメノウズメを見るなり無言で泣きじゃくった。
「よしよし……貴方がどの様な思いで居たのか、痛いほど分かっておりますので大丈夫です」
子供をあやすように優しく抱きしめ、そっと頭を撫でる。泣きじゃくる雪咲の体は震え、アメノウズメの服の裾をぎゅぅっと握り締めていた。一方玲那は、ギリッと歯を食いしばり今にも襲いかかりそうな眼で雪咲とアメノウズメを睨みつける。だがアメノウズメはそれに動じず、静かに言葉を放つ。
「……貴方がどういう人生を送ったのかは分かっています、ですがそれは自業自得というものです。あのまま雪咲と共に居ればあんな人生には……」
”黙れ!お兄ちゃんにベタベタするな!お前は一体誰なんだ!”
「はぁ……自分の住んでいた国の神すら覚えていないのですか?」
”っ……!”
アメノウズメの言葉に、ハッと我に返る玲那。
「確かに雪咲にも反省点はありますが、それを貴方が責め立てる権利は何処にもありません。大人しく去りなさい!」
その一喝で、玲那は姿を消した。だが雪咲の心は既に崩壊寸前で、塞ぎ込みそうな感じだった。
「……気を確かに持ちなさい!そして、しっかりと現実を見て生きなさい」
それだけを言い残し、アメノウズメはいつの間にか姿を消していた。
次話、心の整理、そして向き合う現実!




