第32話(後編)敗北の予感……!
前回はノロケでしたが、今回は雪咲と大男の激戦です!
今回、大男の実力が少しだけ……!
「はぁぁぁ!!」
雪咲が迫る大剣に思い切り振り抜いたのは、日本刀だった。大男の大剣と雪咲の日本刀がぶつかった瞬間、ものすごい量の火花と金属音が鳴り響く。周りに居た人達は結界の中に居る4人も含め全員耳を塞ぎながら蹲り、石で出来ているはずの壁は次々とひび割れていく。
「ほぅ……」
大男は感心していたが、雪咲は正直それどころでは無かった。受け止めた大剣はそのまま日本刀と競り合い、押し潰しにかかってきていた。それをどうにか食い止めているだけでも精一杯なのに、大男の表情からは余裕の表情しか感じ取れなかった。
「そう言えば、まだ名乗っていなかったな……俺はアスト、この反乱軍の頂点だ!」
激しい剣戟の中、普通に日常会話を楽しむかのように名を口にしてくる。そして更に力を込めてくるアスト、これ以上は絶えきれないと踏んだのか大剣を横へ流す。
「……雪咲だ」
流した剣が地面に触れ、雪咲は伸ばした腕と脚の僅かな隙間を狙い刀を滑らせる。だが、あろう事かアストは剣の柄を持つ手を変えてそれを受け止めた。その衝撃は凄まじく、殆ど爆風みたいなものだった。雪咲はその場にとどまろうと必死だったが、アストはまるでそよ風に当たっているみたいな余裕の笑みを浮かべていた。
「……化物かよ」
「只の人間では、この俺には勝てぬさ」
その余裕さが、雪咲に焦燥を招く。力を抑制しているとは言え、それでも並大抵のやつなら十分過ぎるほど。それなのにアスト相手だと、全力を出しても叶うかどうか分からない。それくらいに今の実力には差がついている、どう足掻いても勝てる気がしない。
どうしよ……これ以上やると周りの被害が……
そうこう考えていると、目と鼻の先まで剣が迫っていることに気が付く。反応が遅れたが刀で流す雪咲、だが遅れたせいもあってか胸元に刀傷を負う。出血はそこまで派手ではないが、少しだけ勢いよく服に血が滲んでいる。生暖かい血で服が張り付き、多少気持ち悪くなる。だが少しでも気を逸らそうものなら、斬って捨てられるのはこっちの方だ。
「っ……」
雪咲はこれ以上は考えず、全身に力を込める。刹那、夥しい量の魔力が雪咲の周りを蠢く。まるで魔力自身が生きているかのように、纏わり付くように。光は歪み、空間さえもが歪んで見える。だがそんな魔力の奔流の中に、アストは躊躇無く飛び込んでくる。周りからはお互いの姿が闇に紛れたように見えなくなるが、雪咲だけはしっかりとアストの姿は見えていた。
「これで少しは……」
小さく呟き、ほぅっとため息を零した瞬間だった。頬のすぐそこを何かがとてつもない速度で通り抜けていく、遅れて頬が薄っすらと切れ血が垂れるように出てくる。横目で見てみると、飛んできたのはアストの剣だった。
なっ……!?
そう思いアストの方に視線を戻したが、既に遅かった。魔力の渦の中とは思えぬ速度で、雪咲の腹部に膝蹴りをしてくる。避けれるはずもなく、ダイレクトに食らってしまう。
「がはっ……!」
地に膝を付き倒れそうになるが、アストは雪咲の髪を掴んで更に追い打ちのごとく顔面に膝蹴りを連続でしてくる。蹴りとは思えぬほどに重く激痛が走るが、気絶出来ぬように力を弱め楽しんでいる風に見えた。
「まだ寝かさないぜ?」
力無く項垂れている雪咲の胸ぐらを掴み、宙に浮かせる。何をするかと思えば、そのまま両手を離して回し蹴りだった。脇腹にすっぽりと吸い込まれるように入り、嫌な音を立てながらも壁の所まで吹き飛ばされていく。
壁に激突した雪咲だが、1部屋だけでは無く3部屋位先にまで飛ばされた。ようやく止まったと思った矢先、アストが壁に埋もれた雪咲を引きずり出してさっきの大広間の所まで投げ飛ばす。
「っ~~……!!」
雪咲はただ衝撃に耐えることしか出来ず、ひたすら守りに徹していた。やがて全身がボロボロになり、ガードすらままならぬ体になってしまう。立ち上がろうとも、立てない雪咲の所へアストはゆっくりと歩いてくる。一歩……また一歩と、まるで死の間際みたいにゆっくりと歩み寄ってくる。
「言っちゃぁ何だが、そこまで楽しくなかったよ」
立ち止まったかと思えば突き放すように言葉を発し、脚をゆっくりと高く上げる。
……俺は、これで……
もう内心諦め、完全に死を受け入れていた。だが最期に映ったのは、涙を堪えながら見守るアーシュとユリナ。そして泣きながら駆け寄ろうとしているが、結界で出ることが出来ないジュリアとコーネリア。
「……」
小さく呟いた瞬間、アストの脚はとてつもない土煙を上げて雪咲の頭を踏みつけた。これで雪咲の頭は砕かれ、終わる……筈だった。
こんなにボロボロになる雪咲は、おそらくこれが初めてだと思います。
自分も書いてて、正直苦笑しました。




