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チートを貰ったが、異世界では……。  作者: 月詠 秋水
第6章 エルティア編
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第95話 英雄達の帰還後 その1

無事目的も果たし五体満足で帰れることに喜んでいた冬望と眞弓、だが元の世界に帰れないことを知っていたのは皓ただ一人暗い表情をしていた。元の世界に帰ってまで自分の事を思い返して辛い思いはして欲しくない、そんな願いから雪咲は元の世界に着いた瞬間に雪咲に関する記憶を全て消去するような魔法を忍ばせていた。

そして、ここからの話は英雄達が帰った後の後日談みたいなお話。

皇帝との謁見を終え荷物を取りに向かっている途中、アーシュと遭遇する。


「……皆は?」


「元の世界に返してあげたよ」


「そう……眞弓や冬望は雪咲と離れる事については嫌がってなかった?」


「その事は一切言っていないからね、向こうの世界に付いた時点で俺に関する記憶全てを失われるように魔法陣に細工しておいたからね」


「酷い人……」



 淡々と部屋を片付け荷造りをしつつアーシュと会話する、そして全ての作業を終え雪咲は再び皇帝の元へと赴く。


 皇帝のみが立ち入ることを許された部屋、いわば自室。雪咲はその部屋の前に立ち、軽くノックする。


「何者だ」


「雪咲です、荷造りを終えたのでその報告と出発する前に挨拶をしておこうかと思いまして」


「……入れ」


「失礼します」


 少しずつドアを開けるとそこには書類などが綺麗に整理された大きめの部屋、皇帝は椅子に座りながら紅茶を嗜んでいる光景が映っていた。軽く会釈をしながらドアを潜り、部屋の中へと入りドアをそっと閉める。


「まぁ立ち話もあれだ、座り給え」


 ツァイは座っている椅子の正面にある椅子を指す、雪咲はそっと頷きその椅子に腰を掛ける。


「そんなに固くならなくていい、今の私は皇帝でも何でも無い……ただのツァイさ、普通に呼び捨てで構わない」


「……良いのですか?」


「完全なプライベートルームだからな」


「分かりました」


 雪咲は自然と緊張感が体から抜け、空気も少し和やかになっていた。


「単刀直入に聞いて良いか?」


「どうぞ」


「雪咲は先程”帰れぬ身”と言ったが、差し支えなければその言葉の意味を教えて欲しい」


「……」


 どうしようかと考えながらも少しツァイの方に視線を向けてみる。、ツァイは何も言葉を口にせず黙って雪咲の方を見据えていた。


「……分かりました、では最初の方から話しましょう」


 雪咲は召喚に巻き込まれ死んだことや、神に出会い様々なステータスや能力を与えられてこの世界に来たことや、アルザース帝国を出た後の出来事等を話した。流石に魔王を実は討伐してないことは言わなかったが、話せる限りのことに関しては全て話した。話を聞き終えたツァイはまるで信じられないような表情を浮かべていたが、それと同時に申し訳無さそうな表情を見せた。


「そうか……こちらの都合で呼び出してしまった挙げ句、雪咲の命を奪ってしまった事になるのか。大変に申し訳無いことをしてしまった」


 ツァイは手に持っているティーカップを置き、深々と頭を下げる。


「か、顔を上げてください……皇帝、俺は別に……」


「ツァイ……」


「?」


「呼び捨てで構わないと言っただろう?」


「あー……ツァイさん、俺は別に気にはしてませんよ。大変なことも色々とありましたが、結果的には良好な方へ進めたと思えるので」


 冗談交じりにあははと苦笑する雪咲、それを見て少しだけ柔らかく微笑むツァイ。


「全く……君は不思議な人間だよ」


 そう言うとツァイは椅子から立ち上がり、そっと雪咲に右手を差し出す。


「でもそういう人間は嫌いじゃない、もし困ったこととかあれば相談してくれれば助けになろう。偶には遊びに来てくれると嬉しいけどな」


「ふふっ……ありがとうございます、では困ったことがあればお願いするかもしれません。後は街にはたまに来るので、その時に寄らせていただきますね」


 クスッと笑い、椅子から立ち上がり差し出された手をそっと握る。こうして2人の間に立場を無くした関係が築かれた瞬間であった。


 少しの間雪咲とツァイは談笑し、外を見てみるとそろそろ夕暮れ時に差し掛かろうとしていた。雪咲は何かを思い出したように立ち上がる。


「そうだ……今日中に家を建てようと思っていたの忘れてた……」


「家……?」


「はい、中腹辺りに建てようかなと思ったんですよ。あそこは草木が生い茂っていますし、静かに暮らすには丁度いいかなと」


「では明日にすればいいのでは?家なんて一日そこらで建つものでは無いだろうに」


「大丈夫ですよそこは、魔法で何とかしますので……ちょっとだけ席を外しますね」


 そう言い残し、雪咲は瞬間退場を使いその場から消え去る。ツァイは唖然としつつも、一人紅茶を啜る。こうして10分経つか経たない内に雪咲が戻ってくる。


「どうしたんだい?なにか忘れ物でもしたのか?」


「いえ、全ての作業を終わらしてきたので戻ってきました」


「……ゑ?」


 予想していたよりも早い時間に、ツァイはぽかんとした表情を浮かべる。


「だってまだ10分そこらしか経ってないんじゃ……」


「家自体を建てるのは魔法なら簡単なんですよ、でしたら一度見に来ます?」


「良いのかい?」


「はい」


 ツァイは雪咲が建てた家に興味を示したのか、少し目を輝かせていた。


「じゃあ……行こうかな」


「それでは俺の手を握ってください」


「こうかな?」


 椅子から立ち上がり雪咲の右手をそっと握る、そして雪咲が魔力を込めると……さっきまでツァイの自室だったのが一変、森の中に建つ厳かな家の前に転移していた。


 塀や門はそこまで大きいものではなく成人男性位の高さ、中に入ってみると少し広めの庭と端の方に耕された土、家は少し大きめの和風家屋を想定し瓦屋根に引き戸、玄関を超えて中に入ってみると渡り廊下は綺麗に目を揃えた木材が敷き詰められている。部屋は全て障子で開けてみると畳の敷き詰められた藺草の香りが充満した部屋、台所は冷蔵庫やいろんな棚があり様々な皿や調味料や揃えられていた。


「凄いな……あの短時間でこんな立派な家が……」


「俺が居た世界の昔の家を想像して作ってみました」


 こうして日が沈むまでの間、ツァイは雪咲の家をしきりに探索……もとい見て回っていた。そして満足したのか、また転移でツァイの部屋へと戻っていく。


「いやぁ楽しかった、また遊びに行ってもいいかな?」


「えぇ、お待ちしておりますね」


 2人はそこで解散し、雪咲は部屋に置きっぱなしの荷物を回収しに行く。そして部屋の戸を開けた瞬間、アーシュが物凄い形相でこちらを睨みつけていた。


「え、アーシュ?てっきりもう帰ったのかと……」


「……ずっと待ってたのに、雪咲全然戻ってこなかった」


「ごめん、皇帝に建てた家を見せてたりしてたら遅くなっちゃった」


「……美味しいものごちそうしてくれるなら許す」


「分かったよ、取り敢えず家に荷物を運んじゃうよ」


 雪咲は纏めてある荷物を手に取り、そのまま転移魔法で新しく建てた家に転移する。そして玄関から上がり居間になる部屋の済に置く。こうして今日という日は膜を下ろしてゆく。

どうも、秋水です。

3/1が丁度誕生日だったのでこの話を投稿しようかなと考えていたのですが、思いの外仕事の疲れが溜まっていてこんな時間に……。


それはさておき、このお話も初投稿からかれこれ1年が経過しようとしています。次回作に関してはどんな話にしようか考えて入るのですが、自分一人ではなく知人と2人で作った話を投稿していこうかなと思っています。


このことに関してはまだなんとも言えないので雪咲くんのお話は、まだまだ続くと思いますがどうか最後まで見て頂けたら嬉しいです!

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