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チートを貰ったが、異世界では……。  作者: 月詠 秋水
第6章 エルティア編
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第94話 魔王討伐後

無事に魔王を討伐(?)し終え、気を失った雪咲は皆に連れられアルザース帝国へと戻ってくることになる。

 意識を失った雪咲を抱えた皓達は急いで城へ向かい、空いている寝室を使わせてもらいベッドに雪咲を寝かせる。


「全く……無茶しやがって」


「本当に良かった……生きてて」


「もう……」


 皓と冬望は少し呆れながらもため息を付き、眞弓は安堵のため息をつく。だが一切言葉を発しないアーシュを見て、皓は少しだけ疑問を抱く。


「どうした?」


「……もしかしたらだけど、魔王を倒したのって雪咲かも知れない」


「やはりか……」


 アーシュは皓だけに聞こえる声量で伝える、幸いなことに眞弓と冬望は気づく素振りを見せなかった。


「だけど魔王の魔力がまだ完全に消えたわけじゃない……まだ用心は必要かもしれない」


「分かった……気を付ける」


 こうして午前中は雪咲の件もあり各自自由に過ごすことが出来た、だが眞弓と冬望とアーシュは雪咲の側から一切離れようとはしなかった。ベッドで横になっている雪咲にずっと付きっきりで看病している眞弓、部屋の掃除をしつつも差し入れで貰った果物の皮を剥いて食べやすい大きさに切り分けている冬望、ベッドの近くの椅子に座り何かを考え込んでいるアーシュ。


 雪咲が目を覚ましたのは昼の少し前、部屋の中に居た皆は軽くパニック状態になっていた。皓が部屋に入ってきて混乱は加速し、無茶しやがってと怒られたり散々泣き付かれたり悪態つかれながらも優しくされたり無言でずっと抱きしめられたり。やがてその混乱は収まり雪咲も自由に歩き回れるまで回復した時、全員アルザース皇帝に王の間へ来るようにと呼び出される。


 王の間に入るとツァイは何やら嬉しそうに口角を上げる。


「よくぞ魔王を討伐してくれた英雄達、時期に世界は魔族の驚異を恐れること無く平和になるであろう」


「ありがとうございます、ですが今回の一件私達は大したことはしておりません」


「……どういうことだ?」


 その言葉を聞いたツァイは少し不思議そうな表情を浮かべる、それに構わず皓は話を続ける。


「今回魔王を討伐したのは雪咲であり、俺達は一切と言っていい程手出しすることが出来ませんでした」


「なんと……!」


「俺達では魔王に一切手出しすることが出来ず、また雪咲と共に旅をしていた仲間の一人が魔王の目を見た瞬間……亡くなってしまいました」


「……其の者はどうしたのだ?」


「誠に勝手ながら埋葬させていただきました」


「そうか……辛い思いをさせてしまったな」


「いえ……」


 先程の嬉しそうな空気が一変ししんみりとした空気になってしまう、そんな中ツァイは雪咲の方に視線を向けた。


「して雪咲よ、魔王を討伐した証は有るか?」


「はい、遺体を運ぶのは手が折れますので角だけなら」


 そう言って雪咲は懐からクレアの角を渡す、それを見てツァイは驚きが隠せなくなっていた。


「なんと……偽物ではなく本物の魔王の角、これは認めねばならんかもしれぬな」


 ツァイはそう呟くと、そっと角を部下に持たせ立ち上がる。


「魔王討伐大儀であった、して雪咲と英雄達には褒美を渡さねばな。何か欲する物はあるか?」


 その言葉を聞き皓達は眞弓や冬望と視線を合わせながらざわついている、だが雪咲は迷うこと無くそっと手を挙げる。


「申してみよ」


「出来ることであれば、皓達を元の世界に戻してあげたいんですが……出来ませんか?」


「……すまぬな、召喚魔法の陣は一方通行なのだ。向こうの世界から呼び出すことが出来ても、こちらの世界から送ってやることは出来ぬのだ」


「ではもし出来るのでしたら戻してあげても構わない……と?」


「そうだな、それが英雄達の幸福になるのであれば」


「ありがとうございます」


 雪咲は頭を下げ、皓達に向かい合う。


「おい……それってまさか」


「そうだよ、元の世界に戻れるよ」


「良かった、またいつもの学園生活に戻れるのね」


「早く家に帰ってシャワー浴びたいわね」


 元の世界に戻れることを知った眞弓と冬望は2人で少しはしゃいでいる、だが皓だけは何処か暗い表情のままだった。そう……皓だけは雪咲が元の世界に戻ることが出来ないことを知っていたからだった。


 雪咲はツァイの方にもう一度向き直す。


「ここで魔法を使用しても?」


「許可しよう」


 その言葉を聞き終え、雪咲は目を閉じ魔力を込める。すると足元に少し大きめの魔法陣が現れ、皓・冬望・眞弓の体を淡い光が包み込んでいく。それと同時に、眞弓・冬望の2人は気を失うように目を閉じ倒れ込もうとする。だがその前に体が浮き上がり、天へと昇って行く。


「っ……雪咲!最後だから行っておく……今までずっとありがとうな!お前は大変そうだったが俺はお前と居れて楽しかった!離れ離れになるが……元気でいろよな!」


 皓の言葉を最後に3人の言葉は光の粒子へと姿を変え、天に消えていく。それをただ黙って見送る雪咲だが、握った拳は震え瞳からは無数に涙が溢れ出ていた。


「……その言葉はこっちの台詞だよ……皓こそ元気でいてくれよな……ありがとう、そしてさよなら」


 小さく、誰にも聞こえぬ声で呟く。魔法陣が役目を終えて消え、後には何もない静寂だけが残される。涙を拭い去り、皇帝の方に体を向ける。


「……雪咲は帰らぬのか?」


「俺は……もう向こうの世界には帰れぬ身ですので」


「そうか……ではもう一つ何かくれてやろう、これは同情などではなく追加報酬みたいなものだと思ってくれ」


「ありがとうございます……ではお願いがございます」


「何なりと申すが良い」


「アルザース帝国から北方に見える山、そこの中腹あたりのほんの一部の範囲の土地を頂けませんか?」


「良かろう、一部と言わず中腹より上をくれてやろう」


「ありがたき幸せ」


 こうして雪咲は土地の私有権利書を貰い、北方の山の中腹より上の土地を手に入れることが出来た。

どうもお久し振りです、秋水です。

今回の話からはほのぼのとした後日談になっていくかと思います。

そして100話調度で区切るかどうしようかと作者自身が悩んでいるという……。

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