少年が労働少年になる。
ずいぶん遅くなりました。
後一つの作品の合間なので、このままズルズルいかなきゃいいな(希望)
「なんじゃこりゃ~」
朝鏡を見たガイの第一声がこれだった。
「どったん?」
「何かあった?」
サルヤとアコザが洗面所に顔を出すと、ガイが自分の髪を引っ張っている。
「何してんの?」
そんな様子をみて、声をかける。「誰だ!人にこんなカツラつけた奴」
「見つけた時からそうだけど?」
「ウソ!」
「…実はハジマさんが「薄毛のオレより髪があるのは許せん」とそのカツラを頭に…」
ゴチン
サルヤの頭に落とされたげんこつがいい音を響かせた。
「元々は違う色だったのか?」
「黒と茶色が混ざった色してたんだ」
「寝た後になんかあったんとちがう~」サルヤの復活。
「引っ張っても取れないなら仕方ないんじゃない?」
アコザが引っ張っても洗っても取れないからそう言った。
「…わかった」
昨日は連れて帰り、行くところがないガイを連れてハジマが住む寮に皆が泊まった。そして、朝起きると先の一連の騒動があった。
朝飯を食べるために皆で食堂に行く。
ガイは服をサルヤの予備の作業服を着ることでパジャマは卒業しました。
「ハジマさん。ここって地上じゃないの?」
上を見上げながらガイが聞いた。
「地上だぞ?」
四角い建物の上にあるのは、空色をしているが、押しつぶされたような閉鎖感を感じた。
「地上に屋根は無いぞ?」
「だってどこもあるだろ?」
ガイは首をひねる。
「ここは第5地上。一番下の労働者達の住む所だ」
この世界は、第1から第5まで各層に別れてる。
「第3地上に王族に貴族。第4地上には普通の市民がいる。神話によると、第1地上に神々、第2地上に古代から生き残った怪物達が住んでいるらしい」「本当?」
「王族と貴族達が作り出した都合のいい神話だ。『第3地上に住めるのは神に選ばれたからだ』とか言ってるからな」
ハジマは顔をしかめて言った。
「ハジマさんは、元貴族ですよ」
ここだけの話ですがと片手を口元に当ててアコザが教えてくれる。
ハジマの親類がバカなことをしたため、もれなく親族一同最下層―第5地上に落とされたと言うことだ。
「バカだが、嫌いじゃなかったな。自称『探検家』で第3地上から第5地上まで様々な伝承を探して回っていたな。そのせいで家の財産使い潰していたし。」
「でも、王族達が暮らすところが、最上階ですよね?」
「大方、何か見つけたものだから、慌てて捕まえようとしたんだろ?もし、神々が現れて、王族達の事を否定すれば、今までの事もあるし、最悪の時は皆殺しにされるからな」
そんな話をしながら、食堂についた。
名前は『秋津定食屋』親子3人で切り盛りしている。内装は4人掛けのテーブルが6個とカウンターがあり、ほとんど埋まっていた。
丁度空いたテーブルに座ると
「いらっしゃいませ。ハジマさん達はいつもの定食?」声をかけて来たのは、サルヤやアコザと変わらない位の少女だ。
「みーちゃん、今日も可愛いね~」
「サルヤ、相変わらずね。他の子にも言ってると聞いてるから、定食のおかず一品減らそうかしら」
「勘弁してくれない?そうすると僕の飯に被害が来るから」
アコザが笑顔て割ってはいる。
3人は幼い頃からの友人らしい。
ガイを見ると、
「うわっ、何この髪?染めたの?禿げるよ。サルヤみたいに」
「アコザの方が心配性で禿げるね」
「大丈夫。アコザのには髪が抜けないように栄養のあるもの混ぜてるから」
「おれは~」
「禿げるのが鉄板!」
などと冗談に発展するので昨日からハジマさんにお世話になっていると話した。
「なら、今日からハジマさんの所で働くんだ」
それを聞いた途端、ハジマが食べていた箸を止めた。
「すっかり忘れとったわ」
自分の頭を叩くと、他の皆にも早く食べるように即した。
秋津定食屋から出ると、街の中心に近い所にある『役所』へ連れられてきた。
広いロビーに入るとカウンターに座っている女性職員に声をかけた。
「すまんが、労働者登録をしてく」
ハジマの言葉にニコリと微笑むと、
「こちらにどうぞ」
と角にある小部屋へ案内した。
中に入ると真ん中に両手で抱えるほどの水晶玉が置いてある。下の台座からは部屋の四方に延びる太いコードの様な物が見える。
「はい、この玉に両手で触れて下さい」ガイは言われた通りにその水晶玉に触れた。
「名前も登録しますので教えて下さい」
ガイが名前を言うと水晶玉から淡い光が発せられた。
ピィィ~。
次の瞬間、水晶玉が赤く染まり、警報に似た音を鳴らした。すぐに収まりはしたが、職員が何人か入ってきて水晶玉とその周辺の機械を調べ始めた。
「お騒がせしました」
女性職員が頭を下げる。
「まあ、無事登録が済んだからいいさ」
普通は、水晶玉の認識が済むと、青い光が出て済むらしい。
「あらためて、セ・ガイさん私は登録課のリップと言います。登録関係で何かありましたら何でも聞いて下さい」
少しぽっちゃりした30代の女性で手が(先ほど書類を書いていた)細く綺麗なのが印象に残る。「書類に名前を書いて下さい」
差し出された書類にはどうも、ガイが使っていた言語とは違う様だ。
そう言ってみると、
「取りあえず書いておけ。後は役所の機械が勝手にやってくれる」
元貴族は来た当初、同じ用に上とは違う言語で書かれた書類に書いて処理されている。
「後で、役所の機械に登録されている言語なら、書類も書きかえられて、コピーした分が配達される」
納得がいかないが取りあえず書いてだす。ハジマほか皆が覗きこんで、
「本当に見たこと無いな」
ハジマの呟きに皆がうなずく。
ガイが書いたのは、カタカナだ。昔読み書きを習った相手が、面白半分に自分の失われた母国語で名前だけ書けるように教えてくれた。
本人もかなり気に入ったので、普段から使っている。
リップは書類を受け取ると脇にある機械に読み込ませる。
「しばらくお待ち下さい」
と言われ待つこと10分。カウンターに呼ばれ、一枚のカードを受け取った。
黒いカードにカタカナで名前が書かれている。
ハジマ達がカードを見て、
「俺たちのとは違うな」
そう言って懐から赤色のカードを出す。
「俺は、貴族だったから赤でアコザ達はここで生まれたから青なんだが…黒いのは聞いたこと無いな」
首を捻る。
(王族はゴールドだったな)
末席の王族に一度だけカードを見せてもらったことを思い出した。
王族らしくない女性だったが、以外と気が合い懇意にしてもらっていた。
カードの話になった時、見せてくれた。
「本当なら持っていない事になっているからしゃべらないでね」
神に選ばれて支配する側からの管理用カードとされているのでバレると大変だと言っていた。
「まあ、カードは出来たんだ。働くのは俺たちの所だから急ぐぞ」
時間を見るハジマに3人はついて行った。
リップは去って行くハジマ達を見送り、ガイのカードと共に作成された書類に目を通す。出身地。性別。などか書かれた中で一番下にある欄だけが、読めない言語で書かれていた。
そこにはこう書かれていた。
『卵を内側から割る雛鳥。全てに通ずカードを与える』




