ハナの生活② ハロと味わう朝食
甘い匂いが漂ってくる——
段々とそれが夢ではないという実感が高まり、ふと目を開けた。
なるほど。
今日も、私の1日が始まったのか…
ベッドの上で軽く首や腕を回して、身体と脳を内側から起こしていく。
これは毎朝やってることで、こうするとなんだか起きた後によく動ける気がするのだ。
ある程度ほぐれた所でゆっくりと身体を起こし、先程の甘い匂いの出どころへ向かう——
甘い匂いの元…リビングでは、ハロが材料を並べていそいそと作業をしていた。
「ハロ、おはよ〜」
「ん…おはよ」
「なに作ってるの…?」
「んーと…ハム無し大福」
「……うん、なるほど。多分、普通の大福ってことかな」
そっか、今日は朝から大福か…
まぁ、腹持ちは良さそう…かな?
“ハム無し大福”というのは……
多分、ハロの中では、通常の大福にはハムが入っているのだろう…
……
——ハロと私はルームシェアをしている。
朝晩の食事や、その他の家事は当番制だ。
私が当番の日は、トーストにソーセージと目玉焼き…という、いかにもな朝食を用意している。
逆にハロは、いつも予想外のメニューで攻めてくる。
いや、ハロも別に、攻めたメニューにしているつもりはないのだろう…
ただ、ちょっと天然な所があって、ちょっと発想が奇抜なだけだ。
先週も、“部屋干し大根”とかいうメニューのせいで、部屋の匂いが凄いことになっていた。
換気した後、干されてた大根をクルクルと丸めて醤油につけると、結構美味しかったけど…
……
そんなわけで、ハロは今、熱心にあんこを包んでいた——
中身も飛び出ておらず、なかなか上手くできている。
コーヒーを飲みながら、しばらくその作業を眺めていたが、ふと手つきが止まった——
「あ……」
「どーしたの?」
「冷蔵庫、まだハムが残ってたかも…」
そう言い、立ち上がりかけたハロの腕をサッと掴む——
我ながら、俊敏な動きだったと思う…
「——今日は、ハム無しの大福が食べたい気分かな〜…なんて。」
「そか……ごめんね。今度は入れとくね。」
「うん…ありがとね」
苦笑いしながら大福を手に取る——
形も整っており、売られているものと遜色ない。
さすが、ハロは仕事が丁寧だな…
ハロと2人で大福を頬張りながら、テレビのニュースを見る。
朝から口の中が甘さでいっぱいだったけど、コーヒーをブラックにしておいたおかげでバランスがとれた。
…意外にも満足な朝食だった。
……いつか、あんことハムが入った大福を食べる日が来るのかもしれない。
その大福も、コーヒーと合うといいんだけど。




