7 メルヘン小屋の管理人
さてと、朝食の続きを。お手紙は落ち着いてから読みたい。
『お、うまそうだな?』
椅子に座った途端、先ほどと同じ宇宙人ボイスが左の耳元から?! ヤギッ!?
ち、違うわ! 私の肩に奇妙な平べったい生き物が乗ってるッッ!! ちょっと半透明!!
「ギャー!!! キッショッ!!」
少しでも遠ざけようと、右手でカーディアンの肩をつまんで引っ張った。
「おいおい、失礼な奴だな! お前が望んだから出て来てやってのに。部屋の中での話し相手が欲しかったんだろう?」
「だ、だからってなんでヤモリッ?! ってか、なんでヤモリがしゃべってんのよ!!」
「しらねーよ。オレだって派遣されてここにいるだけだ。オレが人間の言葉を話せるのは埋め込まれたチップのお陰さ。人間の言葉だけじゃないぜ? ほとんどの生物の言葉を認知出来る」
なにそれ? 言語の天才ヤモリってこと? このパシッと私が叩けば死んでしまいそうな爬虫類が? しかも何やらハイテクが埋め込まれているの???
「・・・オマエ気に入らねぇ。オレ、巣に帰らせて貰うわ」
薄桃色のヤモリがヒョイッと横の壁に飛んで垂直に張り付いてモソモソ歩き出した。
知らんけど、コイツめちゃくちゃ有能そうだわ。ここで逃すわけには!! それにこの謎の世界のことをお尋ねしたいわ。
「待って!! ごめんて。突然現れたからビックリしたの。あなたはいつでも帰れるのでしょう? なら私と少しお話してから決めても遅くないよ? ねッ!」
ヤモリのクビをつまんで私の目の前に持ってきて説得。目と目を合わせれば心が通じるはず。異種間だとしても。
「チョッ! その扱いはないだろッッ!」
小さな天才ヤモリは、摘まれた指からジタバタして逃れ、私の胸に飛び移った。
「ごめん。ヤモリの扱いには慣れてなくて。小学校の図鑑で見て以来だったし、さすがに生態の内容までは覚えていなかったの」
「そういう問題ではない。そこんとこは人間性と想像力の問題だ。いいか? オレはオマエを触るが、オマエは基本オレに触るな。体格差を考えろよ? オレから見たらオマエはクジラなんだぞ? 取り敢えず話は聴いてやろう。こちらもNNKデストロイに依頼されてここにいるわけだし」
やば。焦った軽卒な行動でオカンムリにさせてしまったわ。あ、怒りっぽいのはおなかが空いてるのかも?
「朝食を食べながら話そう。私、さっきから食べ損なってるの。ヤモリさんも一緒にいかが?」
私が手のひらを差し出すと、モソモソと乗ってくれた。ちょっと冷たい足先がくすぐったい。
つぶらなまあるい瞳。桜色の体。特徴的な指先。うふふ、なんだか可愛くなって来た〜。
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食卓に飾られた一輪挿しのマーガレットに乗っかったヤモリさんと朝食会。
「見ての通り、オレはヤモリで名はアノール。オマエはトーコだな?」
「うん、暮科透子よ。トーコでいいわ。アノールって呼んもいい?」
「ああ。でもってオレはこのメルヘンハウスの管理人だ。寝床は勝手口のある倉庫部屋のどこかしらだ」
「エッ!? アノールってこの小屋の住み込み管理人なの!! 文字通り家守りしてるのね!! ヤモリが家守! なんかそれってウケ狙い采配なのかしら・・・? ん? ってことは私たちはずっとここに一緒にいたってこと?」
「・・・まあ、そうだな。だからって通常は滞在者に干渉はしないし、許可なく話すことは禁じられているし、オレは挑戦者の生存確認や、必要な補充資材とか小屋の修繕依頼などを本部に連絡しているだけに過ぎない」
「挑戦者??? 私のこと?」
私が挑戦者? 何に挑戦してるっていうの? 生存確認って? 確かに人はいつ死んでもおかしくはないけど??? 他意があったら怖いよ?
アノールにいろいろ質問したら、私が放り込まれたこの状況の謎が解ける?




