5 メルヘンな生活
取り敢えずテーブルの上には水差しのお水と昨日の残りのパン1個しか無い・・・
どこかお客様気分でいた私は空腹のまま、絶望してる。
私、どうすればいいの? お腹ペコペコだよ。
訪れた飢餓感が私の頭を冴えさせる。
サイドテーブルの上の置き物の黒猫で飛ばないように押さえあるインビテーションカードを手にした。
***ウォールクラッシャー暮科透子様***
NNKツアーにようこそ───
チュートリアルは用意しておりません。そのままお進みください。
エリア毎に用意されている設備、備品・消耗品はご自由にお使い下さい。追加はございませんが、自らの生産には制限はありません。
当組合サービスとして、ウエルカムドリンクと到着お祝い御膳をご用意させていただいております。
また、アイテム毎に設定された隠しクエストの条件が整いますと、ギフトを受け取る権利を獲得出来ます。
ご武運をお祈り申し上げます。
NNKデストロイ管理組合一同
*************************************
───なら、ここにあるものはなんでも使ったっていいのよ。
やはりこれは私宛てに違いないの。だって他に誰もいないし、夕べも食事が用意してあるのに誰も帰って来てないし。
「ね? そうだよね、猫ちゃん。もう一回持っていてね」
猫ちゃんの置き物を重しにしてインビテーションカードを元の位置に戻す。
ダイニングの向こうに壁で仕切られて続いているキッチン。
ここにはお料理する道具は揃っている。角に置かれた大きな水がめにはひしゃくとたっぷりにお水が入ってるし、蛇口のついたレトロなカラフルモザイクタイルのシンクもあるわ。
わぁ、炭火でお料理するのね。
熱を感じる火鉢の灰を棒でつつくと、赤い炭が出て来た。早速五徳に鍋を乗せてお湯を沸かしてみることに。
なんだかレトロで面白〜い。うふふ、1人でマイルドキャンプに来たみたいだ。
ザルを持って畑に出てブロッコリーと菜の花を摘んで、ニワトリ小屋にあった卵を3個失敬。鶏さんは別に怒っていない。
「朝食にいただくね。ありがとう。あなたたちもご飯いるよね?」
畑の脇にもしゃっていた雑草を引っこ抜いて小山にして置いたら、ニワトリさんは喜んでくれたみたいで、カクカク頭を振りながら集まって食べてくれた。
フレッシュな野菜と採れたて卵を湯がいて、昨日の残りのパンで朝食。
(*´ ᵕ`) うふふ、なんて贅沢な休日なのかしら?
家の中を食べ物を求めて家探ししたら、倉庫にたくさんの粉が入った袋を発見! 小麦粉だ。
塩とハチミツ、よく分からないスパイス類の瓶は揃ってる。薪も炭もあってかまどもあるし、簡単なパンなら私にも作れる。
相変わらず帰り道も分からないままだというのに、そんな呑気な調子で楽しく山奥の別荘暮らし気分を数日間過ごした、のだけど────




