41 風呂場より愛
天川は風呂に向かい、私は引き続きボイラーの前で天川カエルの高級なお住まいだった水槽をお片付け。
ソイルと岩と流木も洗って干して乾燥させておこう。いい感じに育っていた植物は部屋の飾りに転用しよう。
けど・・・この水槽セット、再び使う日が来るのかな? そんな日は来て欲しくはないけど。
どうにかして元通りに出来ないの? 天川に妙なマネしたマッドなサイエンティストを探し出して締め上げなければ。そのためにはどうしたもん?
薄ぼんやり作業してたせい? ホースが跳ねて私を直撃!!
「げっ、冷たッ!! やっだぁー、下着まで滲みちゃったじゃない!! エプロンの下までビショビショ〜で最悪ぅ〜、チッ!」
途端に風呂場の窓がバッと開いた。
濡れた髪の蒸気した天川の顔がひょっこり。天川はイケメンだから絵図は悪くないけどw
「暮科先輩! 大丈夫ですか? それは僕が後ほど責任を持って片付けますから。僕もう上がりますから先輩は風呂で温まってください」
この後もやることいっぱいで忙しいのに急に声をかけて驚かせないでよ。
「何言ってるの? 私はこれくらいで風邪なんか引かないって。天気いいし自然に乾くよ。天川は変身したばかりなんだから休まなきゃダメに決まってるでしょ? ゆっくり湯船に浸かってていいのよ。天川が出る頃には、昨日のスープの残りで消化のいい雑炊を作っておくね。それなら食べられるでしょ?」
私はしゃがみ姿勢から立ち上がり、窓の前に立って向き合う。
天川の顔と肩しか見えないから大丈夫よw とは言え、もう2回も目撃してるけど。
「暮科先輩・・・どうして・・・どうしてそんなに・・・僕に優しくしてくれるのですか? 僕は勘違いしてしまうじゃないですか・・・」
そんな半泣きの声出さなくても。天川のカエル生活はもう終わったのよ。
「勘違いって?」
「暮科先輩は忘れているかもですが、僕だって一人前の男なんですよ?」
そうなの? 仕事でペアだった先輩として、到底そんな評価は下せないよ?
「・・・天川が一人前・・・? クスッ・・まともに顧客からのクレーム処理もできないくせに?」
「し、仕事は関係ありません!! けど、先輩がそう言うなら仕事でも一人前に認められるように頑張ります!!」
やだ。私ったらいらんこと言って怒らせちゃったかな? けど私の言葉で仕事にやる気が出たのなら、先輩の導きとして成功w
「ふうん。で、私が天川を一人前だって認めたら次はどうするの?」
「ぼ、ぼ、僕は暮科先輩に真剣交際を申込みますッ!!!」
天川は叫ぶように言い放ってから、バシッと窓を閉めた。
「・・・え?」
なに? 今の・・・?
真剣交際って言った? 私と?
マジ?
私は右手に持ってたタワシと左手に持ってたホースを、ポロッと地面に落っことした。
急激に頬がカーっと熱くなって来た。
───私のことが好き?
ええっ!?
私のどこを?・・・いつから?
全然気が付かなかった!
そのまま閉まった窓を呆然と見つめて立ちすくんでたら、再び窓がパシッと乱暴に開いた。
「僕は本気ですッ!!」(>ω<)
天川は真っ赤な顔で叫ぶと、窓をバシッと閉めた。
───そっか・・・
だから私が会社から消えた時も天川だけは気にかけて探してくれていたんだ?
物置部屋から突如神隠しみたいに消えた私を探しに出かけ、柄にもなく命懸けで崖登りしたのも、私のことを大切に思ってくれてたからなの?
今さら気がついた鈍感ぶり。
だって、まさか、そんなこと?─────
胸にズキンッと大きな痛みが来た。マジで痛い。ナニコレ?
トックン トックン トックン・・・
次いで次第に強くなる鼓動。
まるでクラスメイトに告白された中学生の女の子みたいな、胸の痛みとときめきのさざ波・・・




