40 5年後
まさかね、まさかほんとうにずっと繋がってる羽目になるとは。
天川江流と────
*
私が自宅ワンルームで倒れた、あの日からおよそ1年後、無事仕事に復帰した。
住んでいたワンルームマンションもあの日のまま、まんま残っていた。ゴミ屋敷寸前の汚部屋w
勝手に片付けてくれてよかったんだけどw
給料も毎月振り込まれていて、家賃はそこから引かれていた。けどほとんど生活費はかかってなかったから、知らん間にちょっとした小金持ち?になっていた。ま、使わなきゃ増えてくもんね。
私がフィールドゲームに参加していた1年間は天川が言ってた通り、表向きは修行のために関連企業に出向していたことになっていた。けど、別にそれって間違いってわけでもないよ。
そして復帰から約5年。
私は確実に出世してる。平社員だった私は年々昇進し、若干29歳にてエリア統括マネージャーに大抜擢された。秘密結社の仲間である人事の協力もあると思うけどねw けど私の実力は周知の事実だから誰からも大きな不満はぶつけられてはいない。ちょっとした嫌みは言われることはあれど。
───さてと。今日はもう終業ね。資料のファイルをキャビネットに戻してっと。そして今川さんに来週のこと、ひと言挨拶をしておかなければ・・・
「今川さん、来週は私の代理よろしくお願いします。問題が起きた時にはいつでも私に知らせていいから」
「了解です 暮科統マネ、よいバケーションを。1週間なら海外旅行に行かれるのですか?」
「ううん、そんなにゴージャスじゃなくて残念だけど、予約してた会社の保養所よ〜w」
「あ、知ってます! けど・・・人気はいまいちなとこですよね。山の中のロッジで、なんにも無いって評判の場所。自然の中だけどバーベキューも禁止だとか。たぶん目的はデジタルデトックスですね!」
うふふ。私が行くのは、その一般職員用ロッジの奥の、特別棟である、役員・来客接待用ロッジの、さらに奥側の特区の、フィールドゲームも兼ねた極秘実験場の中にあるデジタルだらけの秘密結社NNKの中枢エリアだけどねw
「うんw けど会社の保養所なら安いし、自然の中で美味しい空気吸ってリフレッシュして、また頑張るから有給の間よろしくね。じゃ、お先に。週末だし、今川さんもみんなも早く上がってください」
エレベーターを待つ間に気がついた。ケータイにメッセージが。天川からだ!
《お疲れ様。今日はもう終わりましたか? 明日、めちゃくちゃ待ってます》
《うふふ。来週いっぱい有給を取れたから、早朝に出てそっちに行くね? で、体調はどう?》
《特に変わりはありません。トーコさんは僕を心配し過ぎですよw そうそうカエルにはなりませんから》
《明日の昼までにはそっちに着くよ。天川の好きな蒲鉾をお土産に持っていくからお楽しみにね》
《わーい (人´∀`).☆.。.:*・゜ 僕、早くトーコさんに会いたいです♡》
翌朝、まだ薄暗い夜明けに車で出発した。
かつて私が駆け抜けた秘密のフィールドへ。天川と2人で過ごした懐かしきメルヘン小屋があるところ。
私が自分の未来を決心したあの場所へ─────
あの時、私は決めたの。
私の心の全てを、アノールや秘密結社にさらけ出す必要性なんて全然ないよ?
私は私を巻き込んだ全てを、私の考える理想の未来構築のために利用する。腹に一物持つことにした。
今、あのフィールドゲームの1年間を思い出して、私たち、結構な無茶したよなって思う。
私としては遺伝子操作された天川を元の身体にもどし、妙チキな遺伝子研究は潰したいとこだったけど、もう改変された人たち、自ら改変を望む人たちにはとうの昔からとっくに必要な医学と化していた。
進んでしまったらもう引き返せないこともあるの。
社会基盤となるインフラの既成事実があれこれ積み重なって、決まりやシステムに縛られて、生きにくい社会が出来上がって、やがて人間が持つ許容量を越えてしまって、精神や身体がついていけなくなった人たちが現れて、彼らは秘密結社に救済されて、あの秘密フィールドにてそれぞれの役割を担いながら生きているの。さらに極秘の実験場でもあり企業秘密の特区。
言わば国内に作った一企業グループの福祉施設という名目で存在させた秘密小国。
それを統括してるNNKデストロイ管理組合。
そこに新興テック企業がグループに加わったことで飛躍的に進化したようね。
私の調べによると、「NNK」とは実は数人の有志から始まり、手強い既得権益である「中抜きの壁」を壊そう! っていう既成の利権を壊すために作られた秘密結社だった。
私の推測では、その元祖の数人の有志の1人が、ヤモリ姿でいるのがお気に入りのアノールだったのだと思うのよね・・・
そのアノールさえも全体像は見えないという。
組織ってそれ自体が生き物のようね。
私もアノールと同じく、組織の全体像はわからない。結局は歯車の一つに過ぎないけれど、少しずつ大きな重要なギアに変わらなくてはならないの。
未来のために────
*
まだ星が瞬き夜が明けない早朝。軽自動車を運転する私に懐かしい記憶が蘇る。
天川が突如消えた私を探しに出発し、危険回避の本能から意図せずカエルに変化してしまい、私が聖なる炎で再び解除して人間に戻った、5年前の7月のあの日。
私たちの始まりの日。あの後、私たちは────
しばらく休みます ( ´ー`)φ




