4通目のお手紙開封
「ああ、一時はどうなるかと思ったけど、天川も無事で良かったな。やれやれ」
ネズミ姿のアノールが、テーブルの上でコップを覗き込んでいる。
「んっ? これって無事って言える?」
私はテーブルの縁にしゃがんで、コップを水平目線で横から覗いてる。
水槽をセットするまで、天川アマガエルはキノコベッドのままコップに入れて休ませてる。じっとしてて動かないけど、ぷくぷく息はしてるし大丈夫そう。
ひとまず脱力モードでドスッと椅子に腰掛けた。
天川入りのコップの横に置かれてるNNKデスからの手紙・・・
なんか開けるのも気が重い。できましたらアチラ様とは関わり合いたくなくて。
このフィールドにいる以上、そうもいかないけど〜。
「ねえ、アノール。どうして天川はカエルに戻っちゃったんだろう?」
「・・はっきりとはわからんが、命とは、ヒトゲノムとは、AIに頼れど人類が決してすべてを解明できるものではないってことだ。弄べば想定外が起こって然るべき。実験台となった天川に想定外に特殊能力が備わったのかも知れない。危機にさらされるとカエルになって逃げられるとか、何らかの条件が揃うと蛙化してしまうとか?」
「そうなの? 確かに小さなカエルになれば、折れて今にも落ちそうにプラプラしてた枝にぶら下がっていてもほぼ重さにならないから枝は耐えられる。地上に落下したとしても、軽いから葉っぱのクッションで助かるかも・・・?」
「ああ、危機に陥った無意識下で、生存本能が天川を蛙化させたという線が濃いな。彼は蛙化の稀なる成功例だ」
「稀って・・・! 恐ろしい組織じゃない? 社員を使ってそんな実験するなんて!」
「いや、社員だからだろう? 企業ってのは基本、大概身勝手だ。社運より上層部の利益が優先される」
「そっか。私たちは表向きではまだ普通の社員という身分だった。そして最末端・・・」
「そういうこと。が、今は特殊だ。シークレット部門のトップシークレット業務を受け持つ透明な存在と言える」
「天川自身もどうして自分が蛙化したのかわからないんだもんね・・・」
そうか。私の会社が属する企業グループの中に、ほんの一部の人だけが存在を知る、知る人ぞ知る秘密結社的な組織があるんだわ・・・
謎組織の真の目的は謎だけど、天川が脱皮できるようになるまで私がお世話するしかない。まさか私たちがこんな目に遭ってるなんて、元の同僚は想像もついてないだろうね・・・
「さて、NNKデスからのお手軽を開けてみるね。何が書いてあるのか怖いなー・・・やっぱ見たくなーい!」
手に取ってみたけど、ポイっとテーブルの上に戻す。
「見るも見ないも自由でトーコの勝手だが、読まなきゃ前に進めないぜ?」
「・・・だよね〜」( ´ー`)フゥー...
***ウォールクラッシャー暮科透子様***
NNKツアー《現世を滅ぼすための壁崩しコース》は順調のようですね!───
速報 ☆あなたの現在のスコアランク☆
・不意打ちの危機における対処 【合格・S】
・対人スキル 【合格・SSS】
・野性的適応力 【合格・SSS】
・好奇心と自発的行動力 【合格・SSS】
・警戒心と防御力 【合格・S】
総合評価はSS、現在のランクはシルバーです。
☆今回イベントでは、与えられたルールに縛られないフレキシブルな野性的思考が評価されました。ドアキーパーのハック、巡回警備AIロボットを躊躇なく仕留めた判断が高ポイントです。なお、破壊したロボット精密部品を3日以内に運営本部宛に発送して下さい。
☆ウォールクラッシャー倉科透子様にリワードが付与されました。使用制限されていた出荷・入荷・移動のためのベルトコンベアは全面解放いたします。このお知らせ到着以降、ドアキーパー(※スパイダータイプ/アースワームタイプ/その他 ゲートによって異なる)に命じることで、いつでも24Hご自由にご利用出来ます。
☆明後日午前12:00から、黒猫デバイス、管理人、ドアキーパーいずれかに申し付けすることにより、ベルトコンベア人移動用車両ペダル漕ぎ式(トロッコ型2人乗り)をご利用出来ます。
※トロッコ移動は自由ですが、フィールド全ての出口ポイントを解放されるわけではありません。個別レーンから本レーンに移るポイントで、トロッコ用と荷物配送用のレーンと分かれますので、くれぐれもお間違えなきようご注意ください。
※過失により何らかの損害が発生した場合、加害者の生命エネルギー換置により弁済していただく方式を採用しております。
※ 想定外イベント発生に付き、カエル飼育セット(エサ付き)を用意させていただきました。どうぞご活用ください。
───青い鳥たちは、羊が目覚めるまでつつく。閉じられたその眼の真の色を知るために。
引き続きご武運をお祈り申し上げます。
NNKデストロイ管理組合一同
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「───だって! アノール。 見た?」
なんだか無気味だよね・・・
なんだ? 青い鳥と羊って? なんかどっかで知ってるような?
「おお! トーコはよい評価を得たな。・・・さて、俺はキュートなネズミちゃんからヤモリにお着替えだ。あれが一番落ち着く。俺は行くが、何かあったら呼んでくれ」
「うん、ありがとう。私も1人で考えることがあるし。さて、私は急いで天川が住む水槽をセットしないとね。すっごく疲れたー! 早くお風呂に入りたーい」
湯船の用意も自動じゃないし、モヤモヤしつつも忙しい。動きながら考えよう・・・
暫く休みます ( ´ー`)φ




