33 トーコ、帰り道にて
「ねぇ、アノール。私ってキノコ狩りの才能があるよねーw 美味しかったね。ねえ、知ってる? 昔の人は舞茸を見つけると舞を舞ってしまうくらい喜んだんだって。で、舞茸って名前になったんだってよ?」
お得意の雑学w
「ほんとかよ? ネズミ的にはそこまででもなかったが・・・」
「アノールは牧場でおやつ食べたからでしょ。さらに美味しくするスパイスは空腹だったってことね!」
お腹ペコペコで山の中をさまよい見つけた炙りキノコの昼メシの味は最高だった。たとえ調味料が無くても。とは言え、バターと醤油があったらもっと美味だったけどね〜。清流の小さな泉も見つけたし、山芋も発見して引っこ抜いて夕食にした。
アノールのGPSのお陰で森で迷うことも無く。
って、私はコソコソ動き回ってるけど、アノールと行動を共にしてる私の居場所って結局は運営に把握されてるよね? やだぁ〜w
夜が白々明けた空。草を分けながら獣道を歩く帰り道、アノールとおしゃべりが止まらない。
だって昨日はめちゃくちゃ楽しかったから───
焼き物の郷から逃げるように森に入り、焚き火で山菜とキノコづくし御膳の後、森とは異質のフィールドを発見。他エリア探索に行くはずが、そこで残りの時間を使ってしまった!
そこはアスレチックの廃墟らしきとこで、ボロっちいトンデモ長い滑り台があったり、草木に紛れた朽ちたブランコやら、何やら昔は遊具だったらしきぶっとい丸太が組まれた骨組みが転がっていたり、サビとつる植物でお化けみたいになったバスもあって、私はすっかり少女探検隊の子どもとなってしまった。
そこで秘密基地みたいなツリーハウスを発見し、登って星空眺めつつ一晩を明かしたのだった───
「へえ、そうなの? この辺ってメルヘン小屋の裏にあるあの高い崖の上の向こうなんだ?」
上の方なんてどうなってるかなんてなんも見えないし、崖からはヤギ以外こないし。
「そういうこと。高低差があるからあの場所からは知れないよな」
「そうね。なら私たちは崖から帰れるんじゃない? 明け方は冷えたし疲れたし早く帰りたいよ。登るのは難しいけど下りるだけならなんとか行けそうじゃない? ついでにヤギトンネルの入り口だって見つけられるかも」
せっかくここまで来たんだもん。なるべくこのフィールドを探らないとね。
「ロープもないのに転げ落ちても知らないぞ?」
「アノールが私に最適なルートを知っているはずだよ? ねっ、ここまで来たんだからお願い!」
「けど、ヤギトンネルの入口は人には無理な場所にあるから、そこは通らないがそれでもよければ案内しよう。早く帰れるのはオレも嬉しい」
「えー、ヤギトンネルは残念! けどいいよ。天川も突然いなくなった私を待ってることだろうし。私の分のおにぎり残ってるといいけど・・・」
「あいつのことだから残ってるだろうよ。天川はトーコを探してここまで来ちまったんだろう? めちゃくちゃ好かれているじゃないか」
「・・・そうだよね。ウザい後輩だと思ってたけど、甘ったれでどこか抜けてるけど、一生懸命が空回りしてるだけで、仕事が関係なきゃただの素直ないい子だもんね」
「ふふっ、苦労知らずスイスイ人生で、子どものままの純粋なんだろうな? トーコみたいなのが付いて見張っていなきゃどうなることかw」
「やあねー、私に天川のお守りを押しつけないでよ〜w」
*
「トーコはなかなかやるじゃないか」
「まあね。じゃなきゃこんなとこ通ろうなんて提案しないってば」
アノールの指示に従って、険しくも狭い道を難なく下って行く私。
幼稚園の頃からバランス感覚はいいのよね。雲梯だってサーカスみたいに手放しで綱渡りして遊んでたし。先生に見つかると怒られてたけどw
ん? 聞き覚えのある鳥の声? ううん、これは鶏が小さく鳴いてる声?
私んちの子? それにしても近くから聞こえるわ。
「アノール、この声ってうちのコ? ニワトリ小屋から逃げ出して遊んでるのかしら?」
「・・・ちょっと待て。この声は烏骨鶏Aー5の声だ」
「烏骨鶏はジャナールしかいないしジャナールのこと? この崖のどこかに登って遊んでるの? 今まで世話してきてこんなとこに登ってたことなんて見たことないよ。なんて言って鳴いてるのか聞こえる?」
アノールは、生物なんでもござれの万能天才通訳なの。
「・・・んー? ただただ鳴いてるだけのようだが。ただしとても弱ってるように思う」
「わかった! もしか脱走して登ったけど降りられなくなったんじゃない? 怪我をしてるのかも! 探して回収しないと」
「そうだな。声は近い。すぐに見つけられる。たぶんこっちだ。この下のヤギ道に入る。足下に気をつけて」
なんだか心がサワサワする。
待っててね、ジャナール。すぐ行くから。
「いた!! 5mくらい下のあの右下の小さな岩棚だ。ほら、一本だけ斜めに生えた木の枝先が裂けてプラプラ揺れてるのが見えるあの出張った岩の所」
うん。岩の小さな出っ張りに白いフワフワが見えるわ。
「ジャナールーーー! そこにいるのはジャナールなのーーー? どうしてそんなところにいるの? 今行くから待っててねーーー!」
と、調子よく言ったものの、そこに私が降りるのは無理だよ。どうしよう・・・
「コケーー!!」
呼ぶとジャナールが気がついてお返事した。
「コケーーー!!! コケッ、コケッ、コケッコ!!!」
おおっ? ニワトリって頑張れば飛べたのね? ジャナールの方から私の方へバサバサと羽音を立てて垂直を登って来た。こんなにも鳴いて、私を見つけて喜んでるのね。よしよし、かわいい子。可哀想に、よっぽど心細かったんだね。思いついて崖ルートで来て良かった〜。
どうしたの? ジャナールは無事回収なのに、私の肩に乗ってるネズミ姿のアノールの声は何やら緊迫感。
「おい! 烏骨鶏Aー5、もう一回落ち着いて言え!! 何があったって!? コケッコ、コケコケコッコー!!」
「コケ、コケッコ、コケコッコー!! コケッ・・・・」
「なにッ!! コケッッ!?!? コ? コケコケコッコー!?」
ねえ、どうしたって言うの? 2人で何を話しているの? 私にはさっぱりなんだけど?
「トーコ、落ち着いて聞いてくれ。烏骨鶏Aー5は、天川があそこから落っこちて行方不明だと言っている・・・」




