31 ヤギトンネルを探せ
見てるだけでクラクラするようなあの岩壁をどこからどう登ればいいんだ? 所々のはみ出た岩棚からは木が生えてるから、それを目指しながらたどって行けばいいのか?
ヤギ道さえ見つけられれば。
そしたら険しくとも這ってでもよじ登って行こう。
*
目視で行けそうなルートを探っていたら脂汗が滲んで来た。
僕と僕の肩に乗っかった烏骨鶏のジャナール
「ねぇ、ジャナール・・・裾の藪を抜けてあの崖を登るなんて本当に僕にできると思う? ヤギ道を見つけられると思う? あの崖のどこかにあるヤギトンネルの出入り口まで行くまでが難関すぎて」
威勢良く決心をしたものの見てるだけで一歩が踏み出せない。落ちたらマジで死んでしまうんだ。だからといってここで1人何もせずに待つわけにはいかないというジレンマ。
「人間が落ちたら確実に死んでしまう・・・」(。>﹏<。)
「コケッw」
「・・・ジャナール、今『だなw』て言った?」
「ククククw」
これは間違いなく嗤いだ。
「ひどいよジャナール! 僕は真剣なのに!!」
マジで心細くて、消えた倉科先輩が心配過ぎて狂いそうで、崖から真っ逆さまは怖くて、焦燥感がマックスになって涙が滲んで来た。
イテテッ! ジャナールが僕の耳に脚をかけて頭の天辺まで登って来た。
「コケッコー!! コケッコー!! コケコッコー!!」
突バサバサ羽を広げてけたたましく鳴き出した。
鳴き叫ぶ力みで頭皮に鋭い爪が刺さってとっても痛いんだけど! 翼でバシバシ打たれて目に羽が入るし〜(>ω<)
どうやらジャナールは僕に喝を入れてるようだ。鬨の声を上げて僕を奮い立たせようとしてる。
「フワフワ癒しのぬいぐるみみたいな烏骨鶏に励まされるなんてね」
「コケッココ!」
「んー、それって為せば成るって言ったの?」
「コケッ」
「わかった。今さら引けないしな。さあ行こう! 僕たち、先ずは手前の茂みを抜けないと崖の麓にさえ近づけないね。さて、どの辺りから攻略しようか?」
「コケコッコココ!」
ジャナールは僕を先導しようとしてる?
もしかして獣道を知ってるのか?
ジャナールを頭から下ろして地面におくと、ガサガサと草木の隙間に恐れもなく入って行く。僕も落ちてた枝を拾って片手に、腰を落としてジャナールに続いて突入。顔も体も小枝にパシパシと打たれながら緑の藪トンネルを進んだ。
ああ、蜂の巣に当たらなくてよかったー・・・・
実際の冒険は、天候と植物の迷路に加え、大量の虫と思わぬ野生生物が阻むんだって。
*
眼下の景色にふと足を止める。
「わー、僕たちすごい! ここまでは全てジャナールのお陰だね」
いつしか足下は険しい岩肌を登っていた。ヤギ道に入ったようだ。夢中で登っている内に気づけば崖下の茂みより上に出ていて、メルヘン小屋を見下ろしていた。メルヘン小屋エリアを囲っているイバラの壁が分厚いのも見える。
「コケコッコーーー!」
ジャナールが通る声で鳴くと、メルヘン小屋でお留守番の鶏たちの呼応する声が、遠く小さく響いて来た。
胸がキュンとした。たとえ鶏さんだろうと、僕たちが無事帰ることを待ってくれている存在がいるのって励みだ。
もっと登れば僕たちがいるエリアの外側がどうなっているか見えるはずだ。そしたら効率的なイバラの壁突破口が分かるかも。
思いもかけなかった烏骨鶏ジャナールの助太刀を受け、岩肌のどこかにあるヤギトンネルの入り口を見つけられそうな自信が出て来た。
────そんな油断が招いたのだろうか。
「ウワッ!!」
この高さだろうと滑落したら命の保証なんて。
踏み出してつま先を乗せた岩が、突如ガクッと小さく崩れて僕は仰向けにバランスを崩した。
僕の背中が、宙に浮いた一瞬─────




