表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その壁を抜けたら───  作者: メイズ
壁の向こう側を探検
29/42

29 クエストの謎、解明!

 私が自己紹介したにもかかわらず、この男女が名前を名乗らないところをみると、このゲーム上において、「地元住民」とか「隠遁者」とか「水先案内人」っていう役割名しか振られていないのね。


 挑戦者である私、「ウォールクラッシャー」にヒントをくれるかも知れないモブ的存在の配置ってことかな?



 あくまで主役は私? 



 ウォールクラッシャーって、社内で脈々と続く冷酷な風土をクラッシュする要員ってこと? イバラの壁を破って他のエリアの壁も乗り越え運営側が私に与えたクエストがなんなのか自分の力量で解き明かすのがクエストだった、と見ていいよね?


 なんで私が社会の不具合の改革を背負うことになるのよ? 一介の平の元女性会社員に対してクエストが壮大過ぎない?


 そういやアノールは私のことを「挑戦者」って言ったし、運営側に期待されてるみたいなことを言ってたっけ?


 私はとっく会社は首になってると思ったら、天川によれば「倉科透子」は出向扱いになっているって言うし、しかもそれはなぜか役員レベルからの通達で、ってことは組織的に周到な計画でこの盤上に人を送り込んでるってことだよね?



 羊・・・従順・・・犠牲・・・生贄・・・!



 ふうっと物思いに入っていた私がハッと顔を上げると瞬間、隠遁者さんと目が合った。私のことじーっと見ていた? わ、並んだ美人の嫁?も同じく私を見つめて───


 この女性、そして私。



 経済至上主義のエンジンである、企業の冷徹なシステムの犠牲者らがこのフィールドに集められているのは確実?


「あの。隠遁者さんはどのような経過でここで現地住民として「水先案内人」をしているのですか? 元は工場勤務だったと先ほどおっしゃいましたよね?」


 隠遁者さんの目と口元が、極僅(ごくわず)かにニヤリとしたのに私は気づいた。



 私に聞かれるのを待ってたんだ? なぜ?───


 その瞬間全てがわかってしまったような予感がした。



 ここでの全てがテストだったんだ! この人たちは試験官。


 私を見極めるための─────



 多分これは正解。



「僕は、工場長らが製品の材料の品質を落として中抜きしていたのを役員に内部告発したんです。ところが品質は問題視されず、逆に僕が嫌がらせさせられて、来る日も来る日もただ1人で工場の外回りの草むしりが仕事になりました。抗議は却下されやがて誰も僕に挨拶さえしなくなりました。半年後に工場の屋上から飛び降りました」


「ええっ!? マジですか? それからどうされたのですか?」


 いきなりサラッと個人的大事件を話されるなんてびっくりなんだけど。


「気がついたら病院にいました。少し足は不自由になったけど、生活には問題ない。リハビリを重ねてここの職を与えられました。元々機械いじりが好きで手先は器用でした。自然素材に変わりましたが造形は天職だったようです。神様はいたようです。災い転じて福となす、ですね」


 2人は見つめ合い、ラブラブオーラを放っているのが見える。見えないけど見えるのよ。感じるの。例の伝説映画のセリフではないけれど。



「それを聞いてホッとしましたよ〜。ところで、一つお聞きしてもよろしいでしょうか? あなたは『ここの職を与えられた』とおっしゃいましたが、それはどこからなのですか? 差し支えなければお聞きしたいのですが」


 それが聞ければ私の考察の裏付けが出来るの。


「僕が勤務していたのはとある精密機器を作る工場でした。グループには「ネオ・ノーブル・キンドルAI」という躍進してる有名新興企業がありますよ。僕はグループ企業の調整室経由にてそのネオ・ノーブル・キンドルAI」略してNNK AIにこの仕事を紹介して頂いたんですよ。大変感謝しています。だから心を尽くしてここで作業をしています」


 ここはグループ企業共通の福祉施設であり、企業内の問題点を肌で知っている人を集めたフィールド。けどそれだけじゃない。次世代テックの実験場兼、企業内改革の人材の養成所・・・ってとこで正解ね! もしかして他にも秘密があるかもだけど。



「最後に倉科さんにお伝えしたいことは、僕が愚かだったということです。自分は正義だと確信があるとしても、悪事を知ったとて、知った人たちが味方となってくれるわけではなかったのです。僕は若すぎて複雑な利害関係も建前と本音のリアルも見えて無かった。世の中は単純ではないってことです」


 ふうん。下々には真面目で従順で正直が美徳って設定だしね。それってあくまで「下々」ってとこがミソだよねw



「あの、お二人はスマートウォッチを使ったことありますか?」


「ああ、僕は一時期使っていましたよ。すぐに飽きてしまいましたが」


「私? 私は無いかな。スマホのヘルスケアアプリならあります。それが何か?」


「いえ、大した意味は。お互い健康は大切にした───グググーーキュー・・・」


 やだぁ、私のお腹から特大の音が〜w (*´Д`*)



「倉科さん、良かったら家で何か召し上がりませんか?」


 女性(名前は不明)がそんな優しいことを!



「隠遁者の奥さま。実は私はこの山で自力で食材を狩って腹を満たそうと覚悟していたのです」


「お、お、奥さまッ?!」


 失言。


 2人揃って真っ赤な顔でアワアワしてしまった。いい感じではあったもののどうやらまだ夫婦では無かったようだ。関係が不明瞭な場合、現場では「お連れ様」が基本だけど、このシチュエーションではそれも変よね?



 気まずい。


 逃げよう────



 この浮ついた空気となった直後の2人の展開を私が邪魔すべきではない、という私の逃げを正当化する真っ当な理由を思いついている。


「あ、現地住民様、隠遁者様、わたくし、これから山に狩りに参ります。お気遣いなく。突然の訪問にも関わらず有用なお話ありがとうございました。ではまた」


 きっちり挨拶をし、彼らに背を向けて森の奥へと続く道にざくざくと進むのだった。


 アノールが私の前ポケット中で丸くなって背中を震わせてるから、背中をつまんで引き出したら思いっきり笑い出したw


少し休みます φ(・ω・ )

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ