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その壁を抜けたら───  作者: メイズ
壁の向こう側を探検
24/27

誰かの理想世界

ここから2部 φ(・ω・ )

 私は自宅ワンルームマンションで気を失ってる間に非日常世界に放り込まれ、なんとか適応して生活してたけど、壁は壊してないけど壁を攻略したことで、非日常の中の非日常に入り込んでしまった。


 ここは地下奥深く?の無機質な物流センター。


 ここには誰もいなくて、ガタガタとベルトコンベアで流れてる荷物を、待ち構えている機械の手が仕分けしてせっせとルートを変えている。


 キュートなネズミ姿となったアノールと、コンベアの下に隠れてまずは作戦会議だよ。


「アノール。まずは計画を立てよう。なるべく一番遠くまで行ってから寄り道しながら帰るってどう?」


「ちょっと見学して回るだけならあちこち行けそうだ。この世界は場所によっては細分化されていて、その一つにオレたちはいたわけだ」


「ふうん。私たちは最小単位のフィールドにいたってわけね。なら多人数エリアもあるのね・・・」


 よかった。先客がいる知らない場所に放り込まれたら、その人たちに従うしかなかっただろうし、そしたら新入りってことでまた元の会社と同じようにこき使われていたかも。人がいたらルールが自然発生するし、序列もできる。エリアごとのルールは知れないもんね。



 ───あ・・・これって社会的な実験ぽくない?



 アノールの言葉で、薄らぼんやりだけど全体像が想像されて、私は今までモヤモヤしてたことをぶちまけたい気持ちになった。


「私が放り込まれたゲーム世界の全体地図はおあずけなの? 思うに参加者が本当の生活丸ごとゲームの中で生き抜くなんてやっぱ普通じゃない。テック大企業が広大な敷地を使って体験型ゲーム風に仕立てて参加者をコマにして、何かの検証実験しているんじゃない? 人を拐かして生活させる目的はなんなの?」


「それは・・・要するにトーコが挑んでるのは《現世を滅ぼすための壁崩しコース》って2通目に書いてあっただろう?」


「そうかもだけど、私は事前にはなんにも知らないのよ? さすがにフェアではないよね?」


 私の手のひらに乗ったもふもふネズミちゃんの長い尻尾が、落ちつかな気にヘビみたいに横に波打ち始めた。


 アノールは応答に困ってる? ヤモリ姿より感情がわかりやすい。


 尻尾が止まったと同時にふいっと可愛らしい顔を上げて私の目を見た。


「・・・それは彼らの理想世界構築のためだろうね」


「私が無意識に働き過ぎてたことと関係あるの? 私の力で、元いた優しくないクタクタになって倒れるまで働かされる世界をほんの少しでも変えられるとも思わないよ」


「・・・そりゃ何事も()ずは思わなきゃ始まんないだろ?」


「運営側の真意が知れないんだから信用も出来ないけど、私はアノールのことは好きだよ」


「・・・ありがとよ。けど、オレのことも油断すんなよ? 現世の至上目的は、構築された既存社会システムの維持だ。それは時代とともに最終目的に向かって変化させられて行く代物だが、その理想形は設計者によって随分違ったりもするんだ。このオレはNNKデスが目指す未来に賛同してた。だから人間の頃のオレの優秀な脳を基本OSとし、生体ロボットに使用することを許可した。現在はチップ化して体は替えの入れ物にすぎなくなった」


「それが生き物として正しいことなのかはなんともね。まあ、これから私があちこち見分して回れば、アノールの言う「理想の世界」の判断材料になるってわけね」


「・・・かも知れないな。理想は人によって様々だが」



 さて、こんなところでグズグズしてる暇はないわ。


「じゃ、行こうよ!」


「おう。オレたちは荷物になって運ばれて行くのが無難だろう。ほら、流れて来たあの箱が大きさも良さそうだ。行き先が良さそうなら中身を抜き取って入っていこうぜ。さすっと見て来るから、合図したら実行だ」


 アノールがベルトコンベアにシュタタタッとよじ登り、流れていた大きな段ボール箱の上で尻尾をゆらゆら上げて、これでOKだと私に合図した。



 畑で収穫に使うためのハサミを携帯してたのはラッキー。


 私は指定の大きな段ボール箱から中身のでっかいクマのぬいぐるみを抜き出し、他のレーンに乗せて流した。


 代わりに私たちが箱に入って移動するんだ。



 *


 暗い箱の中で息を潜めていた。響くのは機械音だけ。ゴトゴト運ばれる私たち。少し緊張。


 ふと、アノールが言った。


「なあトーコ。例えば、さっきオレたちが食ったリンゴな? 一箱たくさんの中の1個くらい少なくなっていたからって気にされることもない中抜き。けれどもそれが常態過し、誰も彼もが地道な生産をやめて中抜きで利益を得ることを目指し始めたら、社会は根底から崩れるだろう?」


「そうね。私はやむなきで頂いてしまったけれど、何人もが箱の中から中抜きしてまったらリンゴは届くまでに半減してしまうわ。ましてや抜くのが目的化してしまったら届くのは数個ね。」


 喉を潤したリンゴの借りは返したいけど、返せるか分かんないけど許してね。私はこのゲームの謎を解かなければここから進めないの。


「私を非難してる?」


「ふふ、こんな一方的に理不尽な状況に置かれていい子ちゃんでいたら確かに生き残れないだろうなw」


 アノールはもしかして修羅場をくぐり抜けて生きて来たのかもね。


 会社勤めしてた頃の私。言われたまま、命令されたことを期間内にやり遂げることが、システム内で生き残る手段だった。


 けれどここで生きるためには、フレキシブルに自己判断で最善を選するしかない。綺麗事は言ってられないのよ。




 そして体感およそ30分後に後辿り着いた先は────



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