23 壁を壊さないウォールクラッシャー
ベルトコンベアで流されながら、いつの間にやら私の前後に他の荷物が追加されて行く。
時々赤いビームを当てられて、それがあるとその先に分岐点があるのよ。
ここはどこなの? だんだんと明るくなって来た。ひらひらした暖簾みたいなのを超えたらさらに明るくなって、私が辿り着いた場所は広い屋内空間だった。まるで工場みたいな雰囲気。
どうやらここが集荷センターみたいだね。
腰のベルトにつけてた農作業グッズホルダーに、収穫用ハサミが入っていたのが幸いした。私はベルトコンベアに運ばれながらも包まれたネットから脱出していた。
自動的に選別され、枝葉のコンベアに分かれて流て行く集荷物たち。食べ物だけじゃないみたい。箱に詰められたあらゆる生活用品も。
誰もいない。全て自動的。かなり冷たく無機質に感じる空間。実際、空気も冷えてる。
四方八方迷路みたいにベルトコンベアは繋がっていて、手の長い上から摘む機械にパッパと置き換えられては別ルートに乗って流れてく。
私は1人歩き回って見学。壁上に設置された幾つものモニター幾つかには、俯瞰した私がそれぞれ違う角度で映ってる。
へぇー、うまいこと出来てるのね〜。アノールが言ってた最適化された世界ってこと?
「・・・って私、どうしよう? ここにいれば食べ物には困らなそうだけど、お料理は出来ないし、スズメさんならごちそうだけど、人間が生米のまま食べたら腹痛必至だよ。こんなとこにいつまでもいられないってば」
出入り口らしきドアは見つけたけど、扉横壁についたデバイスに個人識別承認されないと開かないっぽい。物理的に壊す道具は見当たらない。ならベルトコンベアに乗ってどこか違う場所に行くしか出口はないの? 元のメルヘン小屋に戻るルートは分からない。不安しかないよ。
───焦ってはダメ。私には落ち着いて考える時間が必要だ。
集荷ルートに乗ってたリンゴを1個失敬してかじりながら、ガタガタ走るコンベアの下に小さくなって膝を抱えて隠れながら途方に暮れた。果たして私に隠れる必要があるのか分かんないけど、何となく隠れてしまうよねー。本能の性かしら?
「困ったわー。まさかこんな予想外のことになるなんてさー・・・」
なんも解決策が思いつかないままチクタク時間が過ぎてく感。
───やだ。私の足元にちっちゃいネズミ? 真っ白で赤い目で長い尻尾。
「君も一口食べる? ほら、一緒に食べよ? ほど良い爽やかな酸味とサクサク感がなかなかだよ」
リンゴの欠片をポイッと投げた。
うふふ〜(*´ ᵕ`)、ちまちま食べる姿がかわいい〜♡ 癒しだわ。
「もっと食べる? 白ネズミちゃん」
食べ終わったネズミが不意にフリーズして私の顔をじっと見あげてる。
「なあに? かわいいネズミちゃん」
それはいかにもネズミらしい高いキーでひとこと言った。
「・・・相変わらずだなぁ。トーコ」
「げっ、ネズミがアニメ声で喋った!!」
「オレだよ。アノールだ。同期したチップが入っていれば何者にもなれるのがオレだ。ここに忍び込むにはこの姿が丁度いい」
「君はアノールなの?! マジ? どうしてここに?」
「どうしてこうしてもあるか。トーコのせいだぞ。勝手にこんなとこに入り込むなんて前代未聞だ。ハァ・・・オレの失態となるじゃないか。ちょっとオレが目を離してた隙に、まさか参加者が集荷されちまってたなんて。設定したパスワードがいかにも過ぎたようだ」
「ごめーん。だって、あの門番のスパイダーロボって融通が利かないし、あれはアップデートが必要な欠陥品じゃん」
「まあな。アイツはポンコツだ。そしてデジタルにバグはつきものさ。さあ、見つからないうちに帰るぞ。トーコが集荷されたデータはオレがキャンセルしておいたし、トーコがここに到着してからのモニター映像も砂嵐化しておいた。で、おでこに貼られたバーコードをさっさと剥がせw」
「えっ? バーコード?」
指で擦ったら本当にバーコードが貼ってあった。きっとスキャンされた時に知らん間に貼られたのね。
「さあ、これでもうスキャナーに認識されるのことはない」
チョロチョロと私の肩まで登って来た。
「ねえ、アノール! ここまで来たついでにツアーに行こうよ! ここっていろんなとこに通じているんでしょ?」
「おお? 掟破りでウォールクラッシャーがウォールクラッシュ省いて、このワールドのあちこちを回る気かよ?」
「いいじゃない。もう来ちゃったんだもん。ついでだよ?」
「ハァ・・・運営はとんだ参加者を選んだもんだなw キモが座ってるというか、フレキシブルというか、ただの呑気の不感症か? 奴隷社会で死にかけてた人間が環境でこうも変わるとはねw 面白いじゃないか。よし、行こうぜ!!」
「わーい!! さすがアノール!! ちょっと余計なひと言ふた言がムカつくけど」
「ただしこれだけは守れ。誰にも気づかれてはならない。明日の夜明けまでには元のハウスに帰ること」
「分かった。ドキドキワクワクしちゃうね! いったいどうなっているのかしら。かわいいふわふわマスコットを肩に乗せて、これってまさしくゲームの中の冒険者ってじゃんw」
「可愛らしいマスコットかw まさかオレがこんな跳ねっ返り娘の担当になるとは思いもしなかったがな。頼むぜ?」
────かくして私は隠密のワンナイト冒険者となるのだった!
しばらくお休みします。と言いつつ数日後に投稿してるし、先は自分でも分からないけど、しばらくお休みしますw




