21 物々交換ルートの謎
「わー! 天川、見て見て〜!! 紙袋に入ってるのね。開けて中身を見てみよう」
棚に置いた野菜がお米に置き換わっていた。
やったぁー! ヾ(*´∀`*)ノ 嬉しくて米袋を抱きしめて小躍りしてしまうw
「今日の夕飯はおむすびだ! お仕事、張り切れそう。午後からのイバラ攻略もがんばろう」
「はい、暮科先輩が嬉しそうで、ボクも嬉しいです・・・」
天川はそう言いつつもあんまテンション上がってない。きっと、私たちがここに送り込まれた謎と不信感のモヤモヤなんだ。天川のここに心あらずって顔。
「ねえ?・・・・・天川?」
私はその真意を確かめるべく、無言で天川の目を斜め上に覗き込んでじっと見つめたら、顔を赤くして狼狽し出した。
「・・・えっ? な、なんですかっっ急に、暮科先輩!」
「・・・何を考えているの? 今夜のおむすびの具の悩みじゃないよね?」
天川は、私から目を逸らし、物々交換置き場所の棚を見ながら言った。
「・・・そのお米、ずいぶん早く届きましたよね。どこから来たと思いますか? 僕たちの野菜セットはここからどうやってどこに消えたんでしょうか?」
「それは・・・確かに不思議よね。お米ゲットで浮かれてしまって考えるの忘れてたわ。痕跡が残っているかもね。調べてみようか?」
「その前に先輩、重たいでしょう? 取り敢えず僕がその米袋をキッチンへ置いてきますよ。ついでに夕飯のために研いで水につけておきますね」
「うんうん! なら、マグカップに2杯分くらいでお願いね。でさ、唐辛子を入れとくと虫が来ないって知ってる?」
「暮科先輩お得意のライフハックですね。では、終えたらすぐに戻りますから」
「うん、ありがとう」
ずっと抱きかかえてた米袋を天川に託した。
彼は会社では部長に押し付けられたお荷物相棒だったけど、ここではナイスパートナーかもね。会社は配置を間違えたわね。彼を企画営業部に回すなんて。
*
このメルヘン小屋の倉庫部屋は勝手口でもあるの。勝手口を出てすぐ向こうには、ボイラー付きのお風呂場の小屋もあるし、横っちょには山からの水を引き入れて浄化する沈殿池2つが並んでる。
お風呂の向こうは藪が続いていて、そのもっと奥は急峻な崖。ヤギさんしか登れない。下は場所によってはぬかみ地帯が広がってる北側。
誰かがこんなとこからこんな短時間で入って来れるわけないよ。倉庫部屋の床には泥の足跡だってないし。
短時間でお米が届いたけれど、私たちは全くその気配に気が付かなかった。
それでも誰かがこっそりこのメルヘン小屋に出入りしたというの? なわけない。
小さなヤモリのアノールに運べるわけもないし。
思考は堂々巡り。
野菜30セットはザルに入れてこの棚に置いたのよね・・・・それがいつの間にかお米に置き換わっていた。
うーん、どっからどう見ても、ただの木製の古ぼけた素朴な棚でしかない。魔法の棚の要素はないわ。
後ろはただの一面のレンガの壁。その壁の向こうは畑仕事や外で使う用具入れの小さな掘っ立て小屋が背中合わせ。大蛇を倒した斧もそこで見つけたものだった。
「うーん?」
☆☆☆
「暮科せんぱーい!! どこですかー?」
隠れて僕をからかっているだけだと思った。あの人はおちゃめなとこがあるから。
しっかり者で、頑張り屋で、ショートヘアーがすっごく素敵で、いつだってキリリとしていて、みんなから信頼されていて、気弱な僕の背中を押してくれる人。
入社以来の僕の憧れ。
「いい加減出て来てくださいよ! こんなに心配させられたら僕だって怒りますよ!!」
日が暮れても、夕食の時間が過ぎても帰ってこなかった。夕食のおむすびをあんなに楽しみにしていたのに、こんなの絶対ありえない!!!
僕は今、狂ってしまいそうなほどの焦燥に駆られてる。
ある日突然会社から消えてしまった暮科先輩を追いかけて、やっと掴んだ翌日に再び僕の前から消えてしまうなんて────
しばらくお休みします。




