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その壁を抜けたら───  作者: メイズ
謎環境に放り込まれた
20/26

20 初めての物々交換

 私たちが交換出来るものって生鮮野菜だから交換出来る時期って限られてるよね。この先どうなるかわからないのだから、ならなるべく長期保存可能な食べ物と交換しておいたほうがほうが良くない?


 この黒猫姿の端末に言えばいいのよね?


「黒猫ベリス、今日収穫する採れたて野菜詰め合わせ30セットとお米の交換をお願いします」


「かしこまりました。現在交換可能商品を在庫から確認いたします。・・・無農薬有機米 〈非遺伝子組換え品種〉涼風の舞3kgと交換可能です。いかがいたしますか?」


「相場がよくわかんないけど、取り敢えずじゃあそれで」


「この世界は資本主義ではないのよ。相場は需要供給には左右されず、NNKデストロイ管理組合の規定に基づきます。では、午前8時までに管理人指定の場所に置いてね。取引番号wkkt20260420−1で承りました。ではまたね、トーコ」


 沈黙の数秒後、天川と顔を見合わせた。


「暮科先輩。どうやって野菜を運んでどうやって米が届くのでしょうか? ヤギが集荷に来るとか?」


「いまいち勝手がわからないけど、言われた通りにやってみよう。さあ、今から急いで収穫して30セット作ろう」



 ***



 アノールに聞いたら、管理人室兼倉庫部屋の壁際に雑然と配置されていた木の棚が指定場所だった。ここはいろんなものが雑然と置いてあって、私はまだ細かいところは分かってない。


「物々交換の指定場所はここだ。米が届いたら、ベリスもしくはオレがお知らせする」


「誰がこれを取りに来るの? 私が渡さなくていいの?」


「それはこちら側が独自ルートにて全てきっちり取り仕切っている。トーコたちはただここに置けば終わる効率的な仕組みだ」


 ベリスと通話してから何かモヤモヤを抱えた顔してる天川が言った。


「そうなんですか? 手紙はヤギですよね? 物々交換の品はどこから出て行ってどこからここに運び込まれるのですか?」


 天川(あまがわ)は社会人なのに内心が隠せない。言い方にストレスが表れてる。


「・・・カエル小僧、自分たちで推測するんだな? ここでの生活は最初から全部が謎で、あちこちにヒントがあるはずだから」


「アノールさん、僕たちは実験台にされているのですか?」


 天川が棚に乗ってる小さなヤモリに上目遣いしながら、核心的な質問するから私がビックリよ。


「うーん、オレが思うに、お前らは期待されているんじゃないか? 人類の理想のために。今それ以上はオレには言えない」



 **



 朝食前に大急ぎで畑に出て収穫し、30セットを束ね物々交換指定場所に置いた。



 急な一仕事したからもう8時過ぎてる。


 おそばせながら2人で朝食。素朴なナンと目玉焼きとフレッシュ野菜。


「ねえ、お米が届いたらおむすび作ろうよ! 具は何にしよう? 天川は何が好き? あ、海苔がないよね。青じそでいいか」


 楽しみ過ぎる。久々のご飯が食べられるんだも〜ん (*´ ᵕ`)


「ねえ、炊飯器なくたって鍋でご飯炊けるんだよ? 知ってた?」


「・・・はい、そうですね。・・・あっ、えっと? すみません何でしたっけ?」



 ───どうも上の空ね。



「何か気になることでも?」


「暮科先輩。もしヤギが運ぶのではないのなら、物々交換のルートにここから脱出のヒントがあるんだと思います!」


「そうねー。でも私はウォールクラッシャーなのよ。壁を壊すのが役目なのよ。壁を壊して脱出するの」


「それがあのイバラの囲いだと言うのですか?」


「うん、そうよ」


「そう思い込んでるだけってことはないですか? 手紙にはイバラの囲いを破れなんてどこにも書いてありませんでしたけど?」


「それはそうだけど、アノールがそう言ったし?」


 確かお月見会の夜にアノールは言ったのよ。早いとこイバラの壁を崩さないと秋になっちゃうって。それに、私は運良く選ばれてここに来たって。肩書きはウォールクラッシャー。私を閉じ込めている壁を壊すことがそれが元の世界に通じてると確かに言ったわ。



「僕は暮科先輩はアノールさんを信用し過ぎだと思います。確かにイバラの囲いを壊せばここから出られるとは思いますが・・・」


 窓枠に場所を移した黒猫ベリスから短いメロディが流れた。


「***♪お知らせしま~す。先ほど取引番号wkkt20260420−1で承わった等価交換が完了し、荷物が指定場所に届きました。トーコ、今日は美味しいご飯が食べられそうね」



 朝食の途中、早くもベリスから知らされたお知らせに、テーブルを挟んだ天川と私はハッと目を合わせた。


 考え事してぼーっとしてた天川は、まだ食事が進んでない。


「天川が食べ終わったら一緒に倉庫部屋を見に行こう。私、食べ終わったし食器洗いながら待ってる」


「す、すみません! 急いで食べちゃいますから・・・パクッ・・ゲホゲホッ オエッ! ゴッホン、ゲホゲホッ」


「慌てなくていいから。食事はありがたいものよ。ここにいたら分かるでしょ? 味わって食べなさい」


 むせて涙目の天川の背中をトントン叩いた。



 ───まったく。


 天川は子どもみたいに素直なのよね〜。社会人としては純粋過ぎるいい子なのよ。


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