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その壁を抜けたら───  作者: メイズ
謎環境に放り込まれた
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2 インビテーションカード

「・・・ここどこ?」


 いつの間にか知らない場所に来ていて唖然。しかも私、誰かの家に勝手に入ってる。


 脱ぎ捨てて転がっていたスニーカーを履き直した。


 木製の小さなステンドグラスがはめ込まれた扉を推して外に一歩出て、また驚く。


 見たこともない満天の星。夜空にこんなにたくさん星があるなんて? 黒くざわめく緑に囲まれ、周りは暗くて道も見えない。


 怖くなってまた家に戻った。


「や、夜分す、すみません。誰かいらっしゃいますか?」


 焦って声がうわずる。


 だってどんな人が現れるか分からないし、泥棒だと思われて攻撃されるかもしれない。


「すみません。私、道に迷っていつの間にか入り込んでしまっていて・・・」



 ───無反応。


 ただチラチラと揺れる灯に照らされてるメルヘンなお部屋がそこにあるだけ。


 誰もいないみたい。ふと、先ほどから気がついていた足元に落ちている藁色(わらいろ)の紙を拾い上げた。


 封筒だ。この家に来たお手紙ね。


 赤い蝋(ろう)の封印。


 えっと? NNKデストロイ管理組合ってとこからのお手紙みたい。宛先を見ればここに誰がお住まいなのかわかる。申し訳ないけど、見てもいいよね?


 くるっと裏返して見えた文字に目が釘付けになった。



【エリア0(ゼロ)(新規登録) 暮科透子(くらしなとうこ)様】



 ど、どういうことッ?!?!


 どうして私の名前が宛名に??? 心臓がズキンと一発鳴ってめちゃ痛い。


 まさか同姓同名の人がここに? でも私のはその辺にある氏名ではないよ?



 ドキドキドキドキ・・・



 どうしよう? 開けてしまってここに住んでる人のお手紙だったら?


 けど私だって暮科透子だよ? 間違って開けてしまったとしても仕方がないよ? うん。この不可解の手がかりはこれしかないし。



 中から現れた二つ折りのカード。



 ***ウォールクラッシャー暮科透子様***


 NNKツアーにようこそ───


 チュートリアルは用意しておりません。そのままお進みください。

 エリア毎に用意されている設備、備品・消耗品はご自由にお使い下さい。追加はございませんが、自らの生産には制限はありません。


 当組合サービスとして、ウエルカムドリンクと到着お祝い御膳をご用意させていただいております。


 また、アイテム毎に設定された隠しクエストの条件が整いますと、ギフトを受け取る権利を獲得出来ます。


 ご武運をお祈り申し上げます。


 NNKデストロイ管理組合一同



 *************************************



「・・・はい?」


 全く意味不明だ。これは私宛? それとも同姓同名の別人へのお手紙?


 ハテナマークが私の頭の上をクルクル回ってる。



 ふうっと部屋の方から美味しそうな匂いを認識した。


 そう言えば夕食まだ食べてない。


 身につけたままだったショルダーバッグに財布は入ってる。もし違ったとしてもお支払いすればいいよね? ぼったくられたりして?


 ううん、それでもこの香しい匂いには逆らえないわ!



 私は素朴な佇まいの小さな食卓に進んだ。花模様の縁取り刺繍のランチョンマットの上に、1人分の食事が乗っている。


 私の目はもうそこから離せない。無意識に椅子を引き、気がつけば座っていた。


「私のじゃなかったら料金は支払いますので、ありがたくいただきまーす!」



 赤色のグラスは豊穣な香り。赤ワインね。



 今しがた用意されたかのような湯気の立つ野菜とお肉たっぷりのスープと、焼きたての香りのロールパンを頬張った。そしてかごに盛られてる、見たことない大きなさくらんぼみたいな?瑞々しいフルーツを夢中で貪った。


 こんなに満足な食事をしたのっていつぶりだろう?

 小さな幸せを感じたせい? なぜだかキュッと胸が切ないよ・・・


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