18 元カエルとヤモリ、ご対面
「何言ってるの! いつまでここにいるつもりなの? ここには焼肉定食はないのよ? 冷えたビールだって」
「そうなんですか? けど自然がいっぱいで良い所じゃないですか」
そりゃここは平和な田舎体験コテージってとこだけどさ。
「私の推測だと、これは疲労を溜めてた私を使って、ネオ・ノーブル・キンドルAIが配下組織NNKデストロイ管理組合を通して、健康志向を取り入れた、次世代フィールドワーク型ゲームの実験検証をしているみたいに思うのよ。都市で疲れてる人向けに売り出すために」
眉間に力を込めて悩んでるらしき天川。私の推測は全然信じてなさそう。確かに突飛な考えだけど、カエルにされたくせに迷う要素がどこにあるっていうのよ?
「・・・暮科先輩が早くここを出たいなら仕方がないですけど、僕は人間に戻れたばかりですし。・・・ところでアノールさんはどちらに? あの部屋を僕のために用意してくれたとか。挨拶したいのですが、もう夜なのに姿を見ませんね? どこか他の部屋でもうお休みですか?」
「ああ、アノールは夜は仕事なのよ。けど、呼べば来てくれるかも。アノールぅー、聞こえてたら出て来て。新入りがご挨拶したいそうだよ」
アノールを呼んで大きな声を張り上げたら、天川はオタオタ慌ててる。
「先輩、待って下さい。アノールさんの気配が全くしませんけど、自室で集中して仕事中だったのなら申し訳ないですよ・・・」
「アノールはこの家を徘徊中なのよ。警備員でもあるから」
「へぇ、アノールさんは警備員さんだったんですか?」
「役は管理人よ。そういえば、天川はアノールに1回会ったことあるはずだよ」
「僕が? 記憶にはないですけど」
アノールは来るかしら? アノールの姿を知った天川の反応は? 天川はカエルだったのだから、アノールがヤモリだったとしても驚かないよね? 満月のお月見会の時にチラッとだけど会ったことあるしね。
「アノールさん、来る気配はなくないですか?」
天川は廊下との出入り口を振り返った。
「アノールに気配はほとんどないからね。お茶でも飲んでもう少しだけ待ってみよう?」
私たちは目の前のハーブティーを啜って、束の間の沈黙となった。
───アノールの声は、電子音っぽい宇宙人みたいな声なの。
「来たぜ。トーコ、大声出して何の用だ?」
「なっ・・?!」
食卓テーブルの裏側からニョロっと現れたアノールを見た天川は、派手に椅子を鳴らして立ち上がり、壁際に背を貼り付けるまで後ろに下がった。
「・・・へっ!?!? わ、わ、わーーーっ!! わーーーっ!!」
「おうおう・・・にーちゃん。ついさっきまでカエルに、そこまで驚かれるとはな・・・」
「そうよねぇ。天川って大袈裟だよね、フフッ」
私と目が合ったアノールが、ニヤッて笑ったみたい。
分かりにくいけど、ヤモリにも表情はあるっぽい?
かわいい (*´ ᵕ`)ふふ・・・
壁に両腕を貼り付けておののいてる天川が、ハッとして目を見開いた。
「お、思い出しました! 会ったことあります! 僕はアノールさんを束の間お見かけした記憶があります。僕は暮科先輩がここにいることに気がついて、天敵を避けながら近づくタイミングを探っていたんです。僕が窓ガラスに張り付いてこの部屋の中を覗いていてた夜のことですね!」
「そうそう、それよ。アノールと私はお月見会してたの」
「あれは僕の願望が見せた幻想だと思ってました。だってトカゲみたいな生き物がカエル語を通訳して暮科先輩に伝えてくれるなんて有り得ないし。実際、僕は草むらで小石に頭をぶつけたみたいで、明るくなるまで気を失っていたんです。・・・あれっ?・・・・ん?」
モヤモヤを抱えた難しい顔で視線を上に向けていた天川は、ハッと私の方に見開いた両目を振った。
───っ! それってあのお月見会の夜、私が窓からカエルを投げた捨てたせい???
視線が合った刹那、私はサッと横を向いた (¯―¯٥)




