13 最適化された世界
お風呂はメルヘン小屋のすぐ横にあるけど別棟なのよ。裏戸から出入りするの。
私は涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔をした天川を風呂場に放り込んでから、メルヘン小屋の裏戸から家の中に入った。
アノールのお部屋でもある倉庫部屋を抜けて、土間に出てキッチンに入ったところで戸惑った。
「・・・どうなってるの? 部屋の間取りが変わってる!!」
さっきまで外側から見た目は変わってなかったのに、キッチンの向こう側に一部屋増えてる!
質素な小部屋。
ベッドとサイドテーブル、小さなチェスト。クラシックな温かいオレンジ色の明かりを灯すランプに照らされて。
私はあり得ない光景に息を飲んだ。
自分の目を信じられず、たちすくんだまま固まってしまった。
「ここは最適化された空間だからな」
突然アノールの声がしてハッと我に返った。
声の方を目で追ったら、天井にヤモリが張り付いてた。さすが吸盤の手足ね。
「・・・ねえ、ほんとここってなんなのよ? 謎過ぎない? これは魔法なの? ううん、そうじゃないように思うの。レトロな生活なのに一方では超ハイテク感が漂うし。 アノール自身も不思議生物だよね・・・」
「トーコにもおいおいわかって来る。未知なる説明がつかない物理現象は魔法と呼んでも間違いではないさ。見えて来た現象を繋ぎ合わせ、自分で思考することが大切だ。どうだ? オレの緊急の一仕事はなかなかだろ?」
「どうやら私の知識では理解が及ばない世界なのね。このお部屋、アノールが用意してくれたの? カエルの皮から解き放たれた天川のために? 天川は物置部屋にでも突っ込んでやろうと思ってたんだ。あそこには古いソファーもあったし」
「オレはここの優秀な管理人だ。こんなに早くトーコがクエストクリアしてオレを急かせるとはw それは実力か運か、はてさて・・・フフッ。オレは忙しい。じゃあな〜」
「とにかくありがとう、アノール」
シュルルッと天井を走ってくヤモリの背中はあっという間に薄闇に消えた。
私は物置部屋のチェストから古着を見繕ってタオルと共に脱衣所の台に置いてから、風呂の順番を待つ間に夕食の下準備を始めた。
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風呂から上がって来た天川はだいぶスッキリとした顔になってたけど、私の顔を見るとまたウルウル泣き出した。どれくらいカエルでいたのか知らないけど、カエル時代がとっても辛かったのかも。
「暮科先輩・・・僕、僕・・・ずっと先輩のこと探してたんですよ。僕はもう何がなんだか・・・」
黙って立ってるだけならただのイケメンで済むけど、気が弱くて軟弱なのよ。すること言うこと全てにイライラするわー。
「ハイハイ、話はあとで聞く。私は風呂に入って来るから、ぜったいに風呂場には近づくなよ? いいこと? で、天川の部屋はここよ。アノールが用意してくれたの。今は休んでなさい。後で夕食にするから」
私だってあなたに聞きたいことは山積みなのよ。
「あの・・・アノールって誰ですか? ここには他に、誰かがいるんですか?」
「ん? 私、話はあとって今言ったよね?」
自分で自分が汗臭いし、さっさとお風呂に向かった。後ろで天川の焦った声がした。
「す、すみません! 暮科先輩。でもって助けてくれてめちゃくちゃありがとうございましたッ!!」
私は振り向かないで右手だけ上げてお返事した。
たぶん天川は今、私に直角に頭を下げてるわね (*´ ᵕ`) ふふ・・・
少しお休みします φ(・ω・ )




