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その壁を抜けたら───  作者: メイズ
謎環境に放り込まれた
12/26

12 カエルの王子様モドキ

 翌日の朝になった。


「ああ、今日は曇りか。空気がジメジメね。雨が降るのかしら? 今日は水やりはいっか」


 ニワトリさんたちのお世話をしてから畑仕事を早々にきり上げて、イバラの壁、というか檻を壊すべく、大蛇を倒した斧を持って、少しでもイケそうな場所探し回った。


 斧を振り上げてもイバラはガサガサするだけで手応えはなく、全然切れない。向こう側さえ見えない。


 そんなことを場所を変えつつ繰り返して、汗をかくだけのくたびれもうけで日が暮れた。



 あー、ジメジメした曇りの日に汗びっしょり。今日は風呂に入って早く寝よう。夕べはお月見会と、謎のカエル案件で寝るのが遅くなってちょっと寝不足だし。



 **


 いつもの石に座ってボイラーに薪を焚べて湯船の用意。面倒だけど、入浴は仕事終わりのお楽しみなのよね。風呂キャンなんて今の生活ではありえない。

 今思えば、蛇口をひねればお湯がすぐに出るにもかかわらず、1日の終わりにシャワーすら浴びる気力も無くなるなる生活なんて、すごく(いびつ)だったと思うの。


 この生活はまだ1ヶ月も経っていないのに、もう遠い昔のことみたい。



 そんな考え事をしてて、ふと目の端で何かが動いたのに気がついた。


 振り返って瞬間、ビビった。


 そこにはアマガエルがちょこんとこちらを向いて座っていたから。親指ほどのちっちゃいアマガエル。


「まさか夕べと同じアマガエル?」


 その辺にたくさんいるであろうアマガエルの個々に区別がつくはずもなく。本当にこいつが天川(あまがわ)だったら嗤うけど、まさかねw


 でも、アノールは天川のことを知る由もないのにその名前がすらっと出て来たのは不思議よね・・・?


 なんだか眉間にシワが寄るわ。


 カエルさんに向き合ってしゃがんでから話しかけた。


「あんたまさか天川? なわけないよね〜。だったら3回まわってワンって言ってみw」



 私は冗談で言ったのに───



 胸が強張ってドキドキする。


「・・・ウソ・・・このカエルが・・・天川?」


 この展開には狼狽だ。3回ヨタヨタと不器用に回って「ゲコッ」と鳴いて私を見上げたんだもの!


 私は地面に腕を置いて顔を乗せて地面スレスレでそのアマガエルに対峙した。



「マ?・・・マジ? なら私の手の平に乗ってごらん」


 左手前を差し出すとピョコンと真ん中に乗っかった。私の言うことは理解出来てるっぽい。


「・・・これって間違いないの? えっと、どうしてあなたがここにいるの? なぜにそのような姿になってるの?」


「ゲコッ、ゲコゲコゲコゲコゲコゲコ」


 何か必死で言ってるみたいだけど、カエル語は知れない。


 けど、きっとこれは自分で解かなくてはいけない私へのクエストなんだ。アノールを頼れない。



 全く。謎の世界に来てまでこいつのお世話をさせられるとは思いもしなかったけど、このままにしておくわけにもいかない。


 私はどうすればいい? 天川が人間に戻れる道はあるのかしら?



 ん? アマガエルの天川は、私の手の上で(りき)んでる? ウ、ウンチじゃないよね???


 対処に迷っていたら、どうやらこれは脱皮らしい。カエルさんは古い皮を脱ぎ捨てるのよね。


 大変そう〜。イライラするわ。不器用で。こんなのピッて引っ張って取っちゃえ。


 私は左手のひらのアマガエルの剥がれ始めた皮を指でつまんで剥いて、目の前の燃え盛るボイラーの炎の中にポイッと投げ入れた。



「ほ〜ら、スッキリ・・・ って、((((;゜Д゜))) わわわ、何事なのッ?!」


 アマガエルが急激に変体し始めて変形しながら膨らみ出したから、ビビって下に落としてしまった。


 けれどそれは止まることなく、そのまま形を変え続けてる。


 トカゲみたいなったり、魚みたいになったり、ネズミみたいになったり、ペンギンみたいになったり、カンガルーみたいになったり、おサルみたいになったり、目まぐるしく膨らみながら、変化しながら、最終的に人間の姿になった!!



「あっ、あ、あ、天川になったッッッ!!!! アマガエルがッッッ天川にッ!!!!」



 今見たことが信じられない。ナニコレ???


 アグラ姿勢の天川は、自分の手をまじまじと見て、やがて顔の感触を触って確かめた。私はただビックリの呆然として、自分の口を押さえながら天川から目が離せない。その姿が真っ裸であるにもかかわらず。


「・・・戻った! 人間に戻れた・・・」


 天川は自分の体を見下ろした顔を上げ、涙を流しながら私の顔を見た。


「ぼ、僕、暮科先輩ならやってくれると信じていましたッ!! 感激ですッ!!」


「ギャーッ!! 変態!!」


 いきなり立ち上がって抱きついて来たから思わず突き飛ばしてしまった。


 天川は心外そうな恨みがまし気な顔で私を見てから、子どもみたいにでかい声でわんわん泣き出した。


「あ、ごめん。つい」


 チッ。ほんと、コイツは世話が焼ける。


「風呂、そろそろ沸いた頃だから一番風呂に入れてあげる。天川が着れそうな古着なら、うちにあるから用意しておく」


「う・・・先輩! やっぱ僕の暮科先輩だ。グズッ・・ズズズ・・ありがとうございます・・・ううっ・・・メソメソ、うぇ~ん、えーん、えーん、ズズズズルズル、ヒックヒック・・・」


・・・僕の?



 ────もう何が何やら。へんてこな世界があるものね!


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