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その壁を抜けたら───  作者: メイズ
謎環境に放り込まれた
10/28

10 ゆるキャンアワー

 ベーコンが食べたい。目玉焼きにベーコンは定番の組み合わせだ。ここでの夢の実現には労力が必要なのよ。お金じゃなくて。



 偶然に得たたんぱく質を無駄には出来ない。このイバラの壁で仕切られた、限られた空間で生きて行くためには。


 今日は予定を変更し、腐らないうちにこの肉を仕込まなければならない。塩漬けにしなきゃ。


 ここにはこれと言った電気製品がない。冷蔵庫とか。洗濯も洗濯板とタライだし。ここには石鹸みたいに泡立つ木の実があって、洗いに使うのは全てそれなのよ。



 肉の下処置は結構な重労働だった。適度な大きさに切り分けてハーブと共に塩漬けにした。


 物置からいらなそうな木箱を探し当てたから、それを利用して後日燻製を作ることにした。取っ手に穴も空いてるしちょうどいい。どうせ天気のいい日を見繕って外で作るしね。


 子どもの頃のキャンプ経験があってよかった〜。


 失敗したってどうってことない。誰に迷惑かけるわけでもないし、怒られることもない。ただ自分が受け止めて私の糧になるだけよ。


 苦楽を共にした?同僚の顔も、どんなんだったかもうはっきりとは浮かんでこない。ここにいたら、そのうち名前も忘れてしまいそうだ・・・



 急遽(きゅうきょ)の生臭い一仕事を終をえてやれやれ。もうじき日が暮れてしまいそう。今日は風呂に入らなきゃだめ。体が相当ヤバい臭いになってる。


 お風呂は薪で沸かすの。1時間くらいかかる。外での作業だから雨の日は大変。着火も大変だし。もう慣れては来たけど、温度調節はまだイマイチ思い通りには行かないのよね。湯船の上と下で温度が全然違うのビックリw



 お水を浴槽に溜めてから外に出て薪を焚べる。


 ずっとボイラーを見てる必要はないんだけど、私は火守りにちょうどよく配置された石に腰掛け、火かき棒を時折ガシガシしながら、真っ赤になってたまにパチッとはぜる薪をじっと眺めてる。


 なんも考えないでボーッとする時間ってなんか好き。これって贅沢。


 あれよあれよと暗くなって来た。まあるい月が存在を主張し始め、星が瞬いてる。ほんのすこーしかけてるから明日こそは満月ね。月明かりは本当に明るいと今さら知ったわ。今までは何を見て生きてきたんだろ? ネオン瞬く街明かりと街灯ね。



 お風呂の湯加減もそろそろかしら?



 立ち上がろうとした刹那、一陣の風が強く吹き抜けた。風が出る前に沸かし終えてよかったね。少し肌寒くなって腕をさすった。


 しまい忘れて近くの壁に立てかけて合ったシャベルが、カランと音を立てて地面に倒れた。


 あらためて腰を上げ、シャベルを拾おうとして伸ばした手がビクッと止まった。


 持ち手になんかがくっついてる。



「ゲコッ、ゲコッ、ゲコッ、ゲコッ」


 と、それは言った。



 まるで私に話しかけてるみたいに───



 小さなアマガエル? 畑のレタスからここまで来たのかしら? 木々の新緑が眩しいもうすっかり春だしね。


「私はおうちに入るから、キミもおうちへお帰り」


 カエルを草むらにそっとふるい落とし、物入れの箱にシャベルをポイッと投げ入れてからメルヘン小屋に戻った。


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