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リラ・ペンシル③


◇◇◇◇◇


禁書庫内のルール

その1、館内を綺麗に保つこと。館内におけるあらゆる殺傷行為を禁ずる。

その2、禁書・及び禁書庫に関する如何なる情報も外部へと持ち出せない。

その3、不必要な魔法の使用を禁ずる。眠っている禁書を起こすべからず。

その4、読んだ本はもとの場所へ戻すこと。

その5、書物・及び備品を乱暴に扱わないこと。

その6、以上のルールを遵守すること。ルールを破る者は、禁書庫の番人がそれらの行為を許さない。

その7、みんな仲良く本を読みましょう。


◇◇◇◇◇


禁書庫内でのルールをオビとサチから聞かされたリラは、その内容を反芻し思い出す。

先程、私は掃除をしようと安易に魔法を使用した。そしてその魔法発動がルールその3に抵触したから、書庫内で強風が吹き荒れたのではないかと。


リラの推測は当たっていた。


そして先のキュティの禁書庫内での行いも、ルールに抵触したから起きた摩訶不思議現象であった。

まず館内での魔法の発動はルールその3に抵触。更に苛立ちをぶつけようと本棚に蹴りかかろうとした行為はルールその5に抵触する。

キュティのこれらの行いは禁書庫内のルールに抵触し、禁書庫の番人がそれらを許さなかった。

故に禁書庫の番人は報復し、キュティは禁書庫内の記憶ごと消され、ルールその2が必然と発動したのだ。


ふむふむと解説を聞きながら、一つ一つのルールを確認していく。

ルールをうっかり破って、間違って禁書庫を出禁にでもなったら……想像したくも無いが、リラにはもう〝退職〟という道しか残されていないのだから。


「でもね〜、実はルール、これだけじゃないんだよ〜〜?」


ちなみに、ルールには明記されていない〝裏ルール〟があるという。


禁書庫の番人は意思があり、気難しい性格をしているが反面、面白いことが大好きである。

禁書庫へは滅多に新しい人間が訪れることが無いため、時に禁書庫は新鮮さを求めているのだ。


故に、


◇◇◇◇◇


禁書庫内の裏ルール

※禁書庫の番人が許した人間はお咎めなしとする。

面白い人間は、大歓迎。


◇◇◇◇◇



「なんじゃそりゃっ!」



リラは思わず叫んでしまいそうになるが、ルールを聞いた後なので語尾を萎めて声量を途中で落とした。

オビとサチもうんうんと頷いているが、


「でも仕方ないよね。ルールだし」


といった悟った顔をしていた。

二人にとってこれらのルールはもう当たり前になっているのだろう。


まぁ、郷に入れば郷に従え。と言うものね。

慣れようではないか!


さて、それよりも今のルールを聞いて、リラには思うところがあった。



「オビ先輩は禁書庫の担当になって7年目なのよね?」


「そうだよぉ〜。大抵の質問なら答えてあげられる位には、先輩だからねぇ〜」


「じゃあ……私にとって最も大事な質問があります……!」


リラは無意識に佇まいを直し、真剣な声音で答える。

オビの目を曇りないキラキラとした目で見つめ、期待を露わにするリラ。



「ん?何でもどうぞ?……ちなみに〜、俺は恋人いないよ〜!良ければ今度お茶でも……」


「そんなどうでもいい内容じゃないわ」


オビの言葉は遮るように、ピシャッと否定された。


「ガーン。俺、ショック……(メソメソ)」


「オビ……話が進まないじゃない。で?リラは何が聞きたいの?」


サチが言葉を引き継ぐ。

何だかサチ、頼りになるなぁ〜。


何だか二人の関係性が見えて来た気がする。

最初はサチがオビを頼りに甘えているように見えていたけれど……それは極度の人見知りを発動していただけで、実際はサチがお姉さんで、オビは手のかかる弟。

……みたいな立ち位置ではないかと。


「サチ、ありがとう。……私が聞きたかったのは、禁書庫内でも本を読めるのか。という事よ!」


「……禁書庫の本を読みたいの?」


「えぇ。それはものすごーーーく読みたいわ」


リラは前の担当で仕事を忘れるほど本に夢中になった。それも仕事を放棄で、解雇通知を受ける所までいったという前科がある。

次は無いと本人も思っているので(マック・レガー館長の影がチラつくし)、同じ過ちは繰り返さないが〝禁書〟という響きが読書欲を駆り立てている。


読めるのか、読めないのか。

それはリラにとっても最重要な確認であった。


「……結論から言うと、読めるわよ」


「…………(!!!!!!!!!!!)」


伝えるなり、リラは声にならない声で喜びを爆発させていた。

その場でクルクルと回ったり、小躍りを始めている。今にも飛んでいきそうなほどに、浮かれ立っているのが誰の目から見ても明らかな行動だ。


オビもサチもその様子を見て、リラを微笑ましく思った。二人で顔を見合わせてクスッと笑ってしまうほどに。

だが……禁書庫担当になったからには、〝先輩〟として最初に忠告をしておく必要がある。

二人は、真剣な表情で問う。


「……でもね、気をつけてほしいの。……ココは〝禁書庫〟だから」


「リラちゃんはそれでも、どうしても本を読みたい?」


二人の真剣な表情にリラも心を鎮め冷静になる。

二人はリラに問うている。〝禁書庫で働く覚悟〟があるのかと。

きっと楽な仕事ではないだろう。実際に、リラも〝禁書庫の洗礼〟は先程受けたばかりだ。

あれ以上に危険なことが起こると、二人は警告してくれている。

今なら引き返せると、そう伝えてくれている。


それでもこの身に溢れ出る〝読書欲〟には抗えない。

私はどうしても本が読みたい。

そこにまだ見ぬ本があるのならば……!!


「私は、それでも本を読みたいです……!!!!!」


私、リラ・ペンシルは、その為に生まれ変わったと言っても過言では無いのだから。



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